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選手のパフォーマンスは向上したの?

2008年の幕が開けてから早一ヶ月。

元旦からニューイヤー駅伝や箱根駅伝、またラグビーの早慶戦、アメフトのライスボール、サッカーでは天皇杯など、様々なスポーツで熱戦が繰り広げられています。そして、今年は北京オリンピック開催年ですから、今後、各競技団体において日本代表を決定すべく、予選会が繰り広げられていくことでしょう。

4年に一度のオリンピックはもちろんのこと、競技スポーツの世界にいる選手はそれぞれパフォーマンスの向上と試合での成果を期待して日々厳しいトレーニングに励んでいます。とは言え、現実は甘いものではなく、どんなにパフォーマンスの向上と試合での最高の結果を出すことを期待して努力したとしても、個人の努力で克服できる要素と、選手本人の意欲や努力だけではどうしようもない様々な社会的背景があります。

厳しいトレーニングを克服する努力や怪我を回避するための身体のケア、また、食事や休養などは、個人の努力である程度は克服できる要素でしょう。一方、その時代の経済状況やスポーツに対する価値観、科学の発展など、努力や意欲だけではどうしようもない社会的な要素がスポーツを取り巻いています。

このような社会的な背景を加味した時、現在活躍しているアスリートのパフォーマンスは過去と比較して向上している、と考えていいのでしょうか。

アスリートがグランドで使用するスパイクは、地面の素材の分析結果をもとにつくられるようになり、野球で使われるバットは、木製から金属製になったことで飛距離が出るからこそホームランの数が増加したと聞きます。サッカーグランドの芝生を刈る高さは夏と冬の各シーズンで調整されています。陸上競技やスピードスケートでは、それぞれトラックの表面素材やスケートリンクの氷の質が記録に大きく影響するため、摩擦や抵抗などの研究が重ねられ、その結果、高速グランドやリンクができあがっていますから、これらの会場で大会が開催された場合には、各種の記録が更新される可能性が高くなることでしょう。もちろん、記録が更新されることはすばらしいことです。

しかし、これらの記録更新は「アスリートのパフォーマンス向上の現れである」と判断していいのでしょうか。もし、過去のアスリートと気象条件だけでなく、トレーニングや試合の環境、食事の内容等まで同一にして勝負をしたらどうなのか、、、。

例えば、今年の箱根駅伝では、参加20チームのうち3校が棄権を余儀なくされました。例年になく暖かい気候に脱水症状を起こしてしまったような選手もいました。

この状況に関して、私の専門である「スポーツ栄養学」の側面から考えるのであれば、「ミネラルの入った飲料の給水が必要であった」と言うべきなのかもしれません。しかし、「給水が必要だから」と常に給水できるトレーニング環境が、身体の水分の枯渇に対する耐性をなくしているかもしれないのです。

また、成長の段階でエアコンにコントロールされた環境の中で生活していれば、気象条件の変化に対する身体の適応能力をなくすことになるかもしれません。さらに別の視点で考えれば、地球の温暖化。過去の箱根駅伝では雪が降り、路面が凍って選手が足元を滑らせながら走ったことがありました。しきりに寒さ対策が必要であると言われていたことが、私の記憶にも残っています。それが、今回、気温の上昇に伴う暑さ対策が必要になるとは、、、。そして、解説者はこの状況に、「精神的に弱くなったのか」のような内容のコメントをされていました。

いずれにしても、同じ環境下でも平然と、場合によってはプラスアルファの記録で走っている選手もいたのです。

「パフォーマンスが向上する」とは、「スピードの速さ」や「目に見える技術の向上」だけではなく、「どこまで耐えられるか」や「どれだけ努力できるか」、そして「どのような劣悪な状況下でも対応できる」心身の強さである、と私は考えています。