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「自分が納得できる演技を目指したい」上山容弘選手(大阪体育大学大学院/トランポリン)
「自分が納得できる演技を目指したい」上山容弘選手(大阪体育大学大学院/トランポリン)


上山容弘(トランポリン)
1984年10月16日生まれ。大阪府泉南市出身。3歳からトランポリンを始め、2000年、大阪府立日根野高校1年時に全日本選手権シンクロナイズド競技で初優勝。05年の世界選手権では個人・シンクロ・団体の全部門でメダルを獲得。06年には、ワールドカップで4連勝を含む5勝を上げ、日本人初の世界ランキング1位に。07年世界選手権で個人3位となり北京五輪代表確定。

 わずか20秒の間に10種類のジャンプを連続して演技し、その技の難易度、美しさを競うトランポリン。2000年のシドニー五輪から正式種目に採用されて以来、競技としての認知度も徐々に高まっている。上山容弘選手は、2006年に日本人初の世界ランキング1位まで上り詰めた日本のエースだ。2007年11月に行われた世界選手権では銅メダルに輝き、上位8名に与えられる国別五輪出場枠を2枠獲得すると同時に北京五輪代表の座を手にした。

プレッシャーをはねのけ、北京五輪へ

―昨年の世界選手権では見事銅メダルに輝き、北京五輪代表を決めました。その時の心境は?

上山 僕と外村哲也選手(ビッグスポーツ)は、世界選手権に出場するための選考会を免除されていたので、僕ら2人が北京五輪の出場枠をとらなければいけないというプレッシャーがものすごくありました。2人とも上位8人による決勝進出を決め、ちゃんと出場枠を取れたことで安心できたので、決勝はプレッシャーも何も感じることなく、思いきり楽しんで演技ができました。それが3位、銅メダルという結果につながったと思っています。

―アテネ五輪には選考会となる世界選手権で結果が出ず、出場できませんでした。この4年間、次の北京こそという思いがあったのでは?

上山 2003年の世界選手権でアテネがだめになってから、「次は北京」と、すぐに気持ちを切り替えられたわけではなかったですね。それよりもその間にあるワールドカップシリーズや世界選手権で何とか決勝に残ってやろうと。4年先のことよりもまずひとつひとつ目標を追いかけてきたという感じです。

写真:2005/2006年ワールドカップシリーズ大会高く跳べることが一番の魅力

―トランポリンはコーチだったお父様の影響で始められたそうですが、上山選手が考えるトランポリンの魅力とはどういった点ですか?

上山 トランポリンを始めたのは3歳からです。今23歳なので、もう20年以上もトランポリンに携わっています。魅力はやはり高く跳べるところですね。トランポリンから1m、2m、3mという、日常では味わえない高さまでジャンプしますからね。階段で上がるのとは訳が違う。地に足がついてない状態でそこまで跳び上がれるのが一番の魅力じゃないかなと思います。

―最初に世界大会に出場されたのが12歳の時に出場した年齢別世界大会だったんですよね。その時のことを覚えていますか?

上山 真っ白ですね。何も覚えてない。それぐらい緊張して、見事にプレッシャーに負けました。それまでトランポリンは楽しいからという理由でやっていたのですが、悔しい気持ちを味わったことで、「この悔しさは同じ競技でしか晴らせない」と上を目指すようになりました。

キーワードは『鈍感力』

―試合前は今も緊張するほうですか?緊張を克服するために何かされていることはあるのでしょうか?

上山 すごく緊張するほうです。でも試合に対しての緊張というのは、試合に数多く出ることで克服できることかなと思います。メンタルトレーニングは特にしていません。現場の空気というのは現場でしか味わえませんから。

―渡辺淳一さんの著書『鈍感力』に影響を受けたとお聞きしました。考え方が何か変わりましたか?

上山 『鈍感力』に影響を受けたというか、僕自身が探していた言葉だったのです。元々試合などでピリピリと神経質になっていることが多くて。失敗してしまったアテネの選考会のときもナーバスになっていて、自分自身を変えなければと思うようになりました。『鈍感力』を知る前には、「マイペース」という言葉を使っていたのですが、自分の中でしっくりこなかった。ある日、たまたまテレビで『鈍感力』が紹介されていて、気になってすぐに読みました。自分の考えていたことが、本に書かれていた「鈍感になることの大切さ」という言葉とマッチして、それから『鈍感力』を使わせていただいています。

原点はトランポリンが「好き」という気持ち

―読者の方にトランポリンのここを見て欲しいという点を教えていただけますか。

上山 トランポリンは10個の種目を連続して行います。ここを見て欲しいというより、難しい技を10回連続で続けるという競技全体を見て欲しいですね。トランポリンの競技は、演技しているのが20秒で、予備跳躍を合わせても1分半くらいの短い競技です。演技自体にトランポリンの魅力が集約されているので、全体を見てください。

―では最後に、北京五輪での目標をお聞かせください。

上山 自分が納得できる、自分らしい演技をすることです。今までの大会も自分らしい演技ができたときに結果がついてきたし、逆にアテネの選考会の時のように、結果だけを求めてやった試合は良くなかった。トランポリンは採点競技で、審判個人の観点というのがあるので確実なものは全くないし、点数ばかりを気にしていても意味がない。トランポリンが好きという気持ちを大切に、北京では自分のベストパフォーマンスを目指して、メダルが取れれば一番いいかなと考えています。

 昨年の世界選手権後、コーチとして二人三脚で歩んできた父親の剛さんが56歳の若さでこの世を去った。「自分のトランポリン人生を語るうえでは切っても切れない存在ですし、自分の中でかなりのウエイトを占めている。でもそんなことを言ってられませんから」と上山選手は言う。 北京五輪では、天国の父へ吉報が届けられるように、活躍を期待したい。

(2008年2月15日 大阪体育大学にて)