フィンスイミング -Fin Swimming-
文・渡辺功
こどもの頃に習った(習わされた?)、水泳の練習を思い出して欲しい。まず水を怖がらないことが大切。眼を開けたまま、水中に身を沈めることから始めなかっただろうか。
水のなかで眼を開けていられることが、泳げるようになる「イロハのイ」。なのに、人間が魚に近づけば近づくほど、じつは水中で眼を開けてはいられなくなる。泳ぐのが速ければ速いほど、水の抵抗でまぶたがめくれ上がってしまうからだ。
そもそも、まぶたがめくれてしまうほどの速さで、人間が泳ぐことができるのか。疑問に思うかもしれない。それを可能にしたのが「フィンスイミング」。足にヒレを着けて泳ぐスポーツで、スピードは通常の水泳の約1.5倍にも達する。
まるでイルカや人魚になった気分が味わえる「フィンスイミング」。挑戦するときは、まぶたがめくれないよう、ゴーグルをお忘れなく。
●概要●
片足に1枚ずつフィン(ヒレ)を履いて泳ぐ「ビーフィン」と、揃えた両足に魚の尾ビレのような形状の1枚フィンを着け、身体を波打つように上下させて進む「モノフィン」がある。通常の水泳と比べ、スピードが出るだけでなく、最大酸素摂取量が半分程度で済むため、初心者にも親しみやすい。反面、負荷が高いため、本格的に競技を行うには、より強い下半身や腹筋、背筋のパワーが必要になる。
1976年から世界選手権が行われているが、プールだけではなく、川や湖、海中を泳ぐ種目も行われている。03年にエジプトで開催された世界選手権では、20kmの長距離種目が地中海を舞台に行われた。
五輪種目以外のスポーツを対象にした国際祭典であるワールドゲームズでは、81年の第1回アメリカ・サンタクララ大会から採用されている。07年からは、アジア室内大会の正式競技になるなど、競技の浸透が進んでいるただ、日本では「一般のスイマーに迷惑が掛かるから」と、フィン使用禁止のプールが多く、練習場所の確保が難しいのが悩みだそうだ。
●歴史●
フィン自体の歴史は古く、紀元前885年頃の古代メソポタミア北部アッシリアの兵士を描いたレリーフに、フィンらしきものを履いて水中を移動している姿がある。
フィンスイミングは、1950年代のヨーロッパで発達。様々な形状のフィンが考案され、競技会を通して改良が加えられていった。
革新的な変化が起きたのは70年代。旧ソビエトで「モノフィン」が開発され、飛躍的にスピードと効率が高まった。時代は米ソ冷戦下。情報収集や魚雷設置といった工作活動のため、水中でいかに速く静かに泳ぐのか。軍事目的の研究が、「モノフィン」開発の背景にあったと言われている。地理面、軍事面で旧ソビエトに近い関係にあった中国が追従。現在もロシアと中国の選手が、世界大会の上位を独占するところに、‘モノフィン先進国’の面影が見てとれる。
日本に伝えられたのは86年。日本水泳連盟の科学技術委員でもあった筑波大の野村武男助教授(当時)が、学会で紹介したのが最初。88年4月には、日本フィンスイミング協会が発足。グラスファイバー製の国産第一号フィンも発売された。翌89年9月に、茨城県つくば市で第1回の日本フィンスイミング選手権を開催。11月には愛知県東海市で、やはり第1回となるアジア選手権が開かれた。
なお、日本フィンスイミング協会は、96年に世界水中連盟に加盟。水中ホッケーや水中オリエンテーリングといった、国内の水中スポーツを統括する団体として、日本水中スポーツ連盟に改編されている。
●ルール●
呼吸方法や使用するフィンによって、次のような種目に分けられる。種目ごとに、公認の距離が異なる。
「サーフィス」:スタートとターン時を除き、身体の一部が水面から出ていなくてはならない。長さ48cm以内なら、シュノーケルの使用も可能。腕のかき方に制約はないが、水の抵抗を軽減するため、前方に伸ばして組むのが一般的。
「アプニア」:息を止めて一気に50mを泳ぎ切る。水上に顔は出せない。「アプニア(apnea、apnoea)」とは、英語で「無呼吸」のこと。
「イマージョン」:空気ボンベ・レギュレーターといったスキューバ用の呼吸器具を使用して、水中を泳ぐ。「アプニア」同様、水上に顔を出すのは禁止。
「ビーフィン」:上記3種目が1枚モノフィンを使用するのに対し、両足2枚のビーフィンを使って競技する種目。
「オープンウォーター・ロングディスタンス」:海や河川、湖で長距離を泳ぐ。6km、20km、2km×4リレーが行われている。
フィンの大きさは縦・横76cm以内。バネやプロペラのような動力を生むものをフィンに付けるのは禁止。現在は、FRP(強化プラスチック)が、素材の中心になっている。
●競技団体●
NPO法人日本水中スポーツ連盟
〒102−0083
東京都千代田区麹町4丁目4 パシフィックビルB−1
TEL:03−3222−1192
FAX:03−6427−0127
公式サイト
http://www.jusf.gr.jp/
TEAM白鯨2003
http://www.team-hakugei.org/+hak[1]main_menu.html
:関西地区で活動する、フィンスイミングクラブ。なみはやドーム、薬業鳴尾浜スポーツセンターなどで練習会を行い、体験コースも実施している
●大会スケジュール●
第5回関東フィンスイミング短水路オープン大会
08年3月9日(日)
千葉県国際総合水泳場
第20回FIN日本選手権大会
08年5月10日(土)、11日(日)
横浜国際プール
CMASワールドカップ
08年9月18、24日
モスクワ
第5回FIN学生選手権
08年10月
会場未定
短水路FIN日本選手権
08年12月
会場未定
●参考●
通常の水泳とフィンスイミングの記録比較
男子サーフィス100m
世界記録 35秒59 (06年1/1現在)
KABANOV・Pavel(ロシア)
日本記録 38秒79 (06年7/1現在)
酒井 秀彰
男子自由形100m
世界記録 47秒84 (07年4/2現在)
P.ファンデンホーヘンバンド(オランダ)
日本記録 48秒91 (07年10/4現在)
佐藤 久佳
