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チュック・ボール(Tchouk ball)

文・渡辺功

 サッカーのフェアで激しいタックル。バスケットボールの鮮やかなスティール。ハンドボールのゴール前での駆け引き…。ひとつのボールの奪い合いは、ボールゲームの大きな見所だ。ところが、チャージやパスカットといったボールの奪い合いを、一切禁止した球技がある。「相手を絶対に妨害してはいけない」スポーツ、「チュックボール」だ。
 たしかに接触プレーがないから、ケガの心配がなく、年齢の違いを超えて参加できる。球技が苦手な人だって、安心して楽しめるかもしれない。だけど、ボールを奪ったり、奪われたり。ボールゲームなら、当然に行われるはずの行為を削除して、ゲームの面白みは失なわれないのだろうか。
 ボールゲームの常識をくつがえす「チュックボール」。その正体を探っていこう。

●概要●

 1971年に設立された国際チュックボール連盟(FITB)には、アジア、欧州、南米、北米の各大陸から、現在13の国と地域が加盟している。2005年に台湾で開かれた世界選手権では、男子はスイスが優勝、女子は台湾が優勝した。台湾は、男子でも準優勝しており、実力は世界のトップクラス。学校の授業やクラブ活動に採用されているほど、広く普及している。
 日本に伝わったのも、台湾経由だった。80年、台湾師範大学の方瑞民教授が、日本レクリエーション協会に紹介したのが始まり。翌81年に「日本チュックボール協会」が設立された。方教授と親交のあった群馬県高崎市や、町の体育協会ぐるみで普及活動を行っている愛知県豊山町で、特に盛んに行われている。全国に愛好者が広がっていて、95年からは毎年1回、日本選手権が開催されている。
 2009年に台湾の高雄で開催される「第8回ワールドゲームズ」(五輪種目以外のスポーツを対象にした国際祭典)では、公開競技として行われることになっている。

●歴史●

 1970年に、スイス人生物学者ハーマン・ブランド(Hermann Brandt)博士が、論文「チームゲームの科学的批判」を発表。「例外的ともいえる優秀な選手を、次々と大量につくったとこころで、人間性を深めるのに有効かどうかは疑わしい」「身体活動は、できるだけ広く深く一般大衆に浸透するように、社会教育の一貫として、その役割を果たすべきだ」と指摘した。
 ブラント博士は自身の理論を具体化しようと、ハンドボールとペロタ(スカッシュやテニスに似たスペインバスク地方の伝統的スポーツ)を下敷きに、「チュックボール」を考案した。チュック(Tchouk)の名前は、ボールがネットに当たったときの擬音に由来している。

●ルール●

 トランポリンのようにバネの効いた約1m四方のネットにボールを当てて、得点を競う。ただし、ボールをぶつけただけでは得点にならず、ネットに当たってはね返ったボールがコート内に落ちると、得点が認められる。
 ネットからはね返ったボールを、守備側の選手がダイレクトでキャッチすると、守備側チームの得点になる。ほかにも、シュートしたボールがネットに当たらない、はね返ったボールが、コートの外やネットから半径3mの立ち入り禁止エリアに落ちた、あるいは、シュートした選手に直接当たった、などの場合も、守備チームの得点になる。
 ネットは約60度の角度で、上向きに固定されている。シュートする側は、はね返ったボールを捕られないように、ネットの角度や反発を計算して、シュートの向きと力加減を考える。守る側は、攻撃側の意図を読み、ボールの動きを予測する。こういった頭脳戦が、チュックボールの面白さだ。
 パスカットやチャージといった、ボールを持った相手を妨害する行為は、すべて反則。ボールを持つ側のパスは3回まで。ひとりの選手がボールを持っていられる時間は3秒まで。ボールを持って歩くのは3歩までに、それぞれ制限されている。ドリブルは禁止だ。このため、高度なテクニックの必要はなく、力量の差が多少選手の間にあったとしても、多くの選手にボールがまわる。パスはカットされる心配がないので、速さよりも正確さが要求されることになる。ブランド博士の狙いがうかがえる。
 ひとつのコートに、ひとつのネットで競技するときと、ネットをふたつ置いて行う場合がある。1ネットのときは1チーム6人制で、コートは20×20m。2ネットだと9人制で、20×40mのコートを使用する。ネットがふたつある場合も、サッカーのゴールやバスケットリングのように、チームによってどちらを使用するのかの区別がなく、同じチームが、ふたつあるネットのどちらにシュートしても構わない。
 得点が入るごとに、ボールキープの攻守を交替。15分ずつの3ピリオド制で行われる。

●競技団体●

日本チュックボール協会
〒360-0041
埼玉県熊谷市宮町1‐194 落合様方
TEL.・FAX.048‐521‐3235

●大会スケジュール●

第14回日本選手権
08年3月2日(日)
ぐんまアリーナ(群馬県総合スポーツセンター):群馬県前橋市関根町800

兵庫県小野市チュックボール交流大会
08年3月9日(日) 
小野市総合体育館(アルゴ):兵庫県小野市王子町917‐1
 兵庫県内在住、在学、在勤の方による
 チームの参加が可能です。 
問い合わせ 小野市教育委員会体育保健課
       0794−63−2591