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.巨人戦の視聴率が悪くても、野球人気は低下していない。ただ、このままだと、未来は心配だ。
文・渡辺功
◆大阪、福岡、千葉、北海道、仙台…。プロ野球の人気は落ちていない
「巨人戦 伸びない視聴率」
「視聴率過去最低 テレビ局巨人に見切り」
今シーズンのプロ野球開幕直後には首位を快走したジャイアンツだったが、テレビ中継の視聴率は低迷。4月の平均視聴率は関東地区で12.6%(ビデオリサーチ調べ=以下同)と、月別の集計が始まった89年以来、最低を記録。新聞紙上を賑わせた。
翌5月の平均は11.1%、6月は9.2%と、最低視聴率の更新は続き、近ごろでは巨人戦が地上波で全国中継されない日も増えている。
最盛期の83年には、年間の平均視聴率が27.1%。テレビ局にとって「ドル箱カード」と呼ばれた巨人戦の中継だが、この10年を比較しても、96年の21.4%から、昨年(05年)は10.2%へと半減している。
以上のデータからも、巨人戦のテレビ視聴率が低迷しているのは、否定できない。しかし、だからといってプロ野球の人気が落ちている、と考えるのは、大きな間違いだ。
「浜ちゃんファイト」さんの言うとおり、甲子園球場のタイガース戦は連日満員。チケットは、どんな相手の試合でもなかなか手に入らない。しかも、昭和30〜40年代に、村山や江夏、長嶋や王といった伝説的な名選手が活躍していた時代の阪神対巨人戦でも、甲子園球場に空席があることが、じつは珍しくなかったんだ。
タイガースだけじゃない。福岡ドームや千葉マリンスタジアムには、ホークスやマリーンズの試合を目当てにしたお客さんが、大勢詰めかけている。両チームの前身である南海ホークスやロッテオリオンズが、かつて本拠地にしていた大阪球場や川崎球場には、シーズンの真っ只なかでも、人数を目で見て数えられるほどの観客しか入っていないときが多かった。
一昨年、北海道に移転したファイターズ、昨年、仙台に誕生したイーグルスだって、着実に観客動員を伸ばしている。それぞれの地域のテレビ局が中継する地元球団の試合は、視聴率だって悪くない。それでも、プロ野球人気が低迷してると言えるだろうか。
◆野球中継の視聴率が、重要だろうか
巨人戦の視聴率が低下したのは、当り前ともいえる。野球以外のさまざまなスポーツが人気を集め、ゲームやインターネット、DVDなど、テレビのほかにも、家のなかで楽しめる娯楽があふれるようになった。そんななか、巨人戦を観るだけのために、国民の3割近くもの人たちが、毎日2時間も3時間もテレビの前にいることのほうが、不自然だろう。
Q23やQ39、Q40などで、くりかえし話しているけど、これからプロ野球が発展していくためには、地域に支えられた関係を築くしかない。親会社の新聞を日本じゅうで売るために、全国規模の人気球団を目指そうとする考え方が、そもそも時代にそぐわなくなっているんだ。
優勝争いの佳境や日本シリーズ、あるいはWBCのような国際試合を除いて、プロ野球の試合(巨人の試合)を全国ネットで中継する意味は、もう存在しない。地方のテレビ局が、地元チームの試合を中継すれば充分だ。球団のない地域には、四国のように新しいプロ野球チームやリーグを創るほうが、よほど盛りあがる。熱心な野球ファン向けには、有料の衛星放送やインターネット中継もある。
そもそも巨人戦の視聴率が、そんなに重要な数字だろうか。視聴率は、テレビ局の人間が考えれば良いこと。視聴率が悪くなれば、ほかのスポーツ中継や、ドラマやバラエティ番組に切り替えるだけだろう。プロ野球は、テレビ局のために存在しているのではない。なのに、テレビ局の利益を示すバロメーターでしかない視聴率で、野球全体の人気を測ろうとすること自体、おかしな話なんだ。
◆街なかから消えたキャッチボール
プロ野球人気は落ちていない、と断言したけれど、心配なこともある。
それは、日々の暮らしのなかから、野球が消えつつあることだ。あなたは最近いつキャッチボールをしただろう。草野球をして、遊んだ記憶があるだろうか。
たとえば、昭和30〜40年代には、昼休みのサラリーマンや仕事の手を休めた前掛け姿のおじさんが、オフィス街や商店街でキャッチボールする姿を、よく見かけた。こどもたちは、路地裏や神社の境内などあちこちで、三角ベースをして遊んでいた。あらゆる人が野球に親しみ、プロ野球人気を支える「すそ野」は、現在よりもずっと広がっていた。
これまでのプロ野球界は、野球人気の「すそ野」を広げるために、日本の野球界全体をリードするような活動をほとんどしてこなかった。プロ、社会人、大学、高校…といった具合に、日本の野球界がバラバラなことも、原因のひとつだ。「すそ野」が広くないスポーツは、頂点も高くならない。プロ入りや名門校への進学を目指す、ひと握りのエリートだけが特別に技量を高めるのではなく、普通のひとが日常的に野球を楽しめる環境がない限り、将来の発展はありえない。
いったい誰が野球の人気を支えているのか。野球の未来のため、いま何をすべきなのか。プロ野球に携わる人たちが、まず心配しなくちゃいけないのは、街なかからキャッチボールや三角ベースが消えてしまったことであって、けっしてテレビの視聴率ではないはずなんだ。
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