四国で始まった新しいプロ野球。これまでのプロ野球とは、何が、どう違うの?
質問者:「メジャー吾郎 /13歳」

.野球をやりたいのに、やる場所のない若者のための新しい野球リーグ。いままでのプロ野球、そして野球界に欠けていた部分を、埋めることが期待される。

◆セ・リーグでも、パ・リーグでもない、まったく新しい野球リーグ

 ゴールデンウィーク初日の4月29日。愛媛県松山市の「坊ちゃんスタジアム」で、いままで聞いたことのないチーム、見たことのない選手たちによる新しい野球リーグが始まった。その名は「四国アイランドリーグ(Iリーグ)」。
四国4県それぞれに1チームずつ。「愛媛マンダリンパイレーツ」「香川オリーブガイナーズ」「高知ファイティングドッグス」そして「徳島インディゴソックス」。みかん、オリーブ、闘犬、藍染と、各県の名物をニックネームにした4チームが、10月まで、週末を中心に90試合のリーグ戦を行っていく。

 「四国アイランドリーグ」は、現在のプロ野球の2軍や3軍というわけではない。都市対抗野球に出てくる「○○電器」や「○○自動車」といった企業の野球部とも違う。セ・パ12チームの試合を主催する日本プロ野球機構や社会人野球とは無関係に、新しくつくられた組織で運営される独立したリーグなんだ。
アメリカやカナダでは、「独立リーグ」が珍しくない。メジャーリーグの30球団や、その傘下の3A2Aといったマイナーリーグのチームは、すべてメジャーリーグ機構に所属している。それとは別に「アトランティック・リーグ」「ノーザン・リーグ」「フロンティア・リーグ」といったリーグが、いくつか運営されている。
各リーグとも、チームは8〜12くらい。毎年のようにチームが誕生したり、消滅したりするけど、それぞれのチームが、街の人々に野球を楽しむ機会をもたらしている。野茂英雄投手たちがオーナーになり話題になった「エルマイラ・パイオニアーズ」は、「キャンナム・リーグ」という独立リーグに所属するチームだ。

 日本でも、昔、そんな「独立リーグ」に似た組織が存在した。1947(昭和22)年に始まった「国民野球連盟(通称、国民リーグ)」だ。「宇高レッドソックス」「大塚アスレチックス」など、いくつかのチームが参加し、夏・秋2シーズンを行った。が、運営面で行き詰まり、1年あまりで消滅した。日本野球連盟に所属しないプロ野球リーグの誕生は、この「国民リーグ」以来のことになるんだ。

◆月給12万円。25歳で自動的に引退。平日は、学校での野球指導やボランティア。

 「四国アイランドリーグ」の特徴は、年齢制限があることだ。17歳から24歳の選手しかプレーできない。それは、このリーグの目的が「プロ野球選手となることを夢見ている若者にチャレンジのための育成の場を提供すること」だからだ。
1億円プレーヤーなんていない。選手の月給は、全員一律12万円と食事代のみ。良い成績を残しても、給料がアップすることはない。「IBLJ」(日本独立リーグ)代表の石毛宏典さん(元西武ライオンズ、ダイエー・ホークスで活躍した名選手で、オリックスの監督もした)は、「一番の報酬は、プロ野球選手になること」だという。

 また、「四国リーグ」のチームには「ソフトバンク」や「読売新聞」といった親会社が存在しない。チームの運営費用は、入場料のほか、地元企業のスポンサードでまかなわれる予定だ。そのためには、地元の人の理解と応援が必要になってくる。選手や監督コーチたちは、試合のない日に小中学校で野球指導を行ったり、ボランティア活動に参加する。シーズンオフには、派遣社員として地元の会社で仕事をする。四国各県の人々に野球を楽しんでもらいながら、「おらがチーム」として支えてもらう。そして、地域の振興へもつなげていく。こんな仕組みになっているんだ。

◆減り続ける野球チーム。技術を伝える機会のないプロ野球OB

 近年の経済不況で、企業の野球部がつぎつぎと休部・廃部になるなか、プロ野球チームに入団できるのは、1年に70人ぐらい。そのほかの大多数の若い選手が、卒業したり学校を辞めた後、野球を続けられる環境が大幅に減っている。「四国リーグ」は、そんな若者たちの受け皿としての役割を担おうとしている。(実際、昨年末から全国で行われた入団テストには、約1,100人もの選手が参加した) 

もうひとつ、引退したプロ野球選手の活躍の場としても期待されている。日本の野球界では、プロと学生・社会人との交流が、著しく制限されてきた。元プロ野球選手が、学生や社会人の指導者といった野球に関わる仕事に就くケースは、きわめて少ない。「四国リーグ」では、各チームに3人ずついる監督コーチだけでなく、多くのプロ野球OBが巡回コーチとして、指導を担当することになっている。彼らに現役引退後も、野球に関わる充実感や満足感を体験してもらい、その高い技術を若い後輩に伝えてもらう。これも「四国リーグ」が目ざすものだ。

 本来これらの役割は、既存のプロ野球が中心となり、やるべきことだった。たとえば、Jリーグのチームには、ユースチームをつくり選手の育成や底辺の拡大に貢献することが、義務づけられている。多くの元Jリーガーは、当たり前のように、高校や大学のサッカー部を指導している。
 このように、これまでの日本の野球界には大きく欠けていた部分のあったことが、「四国アイランドリーグ」が誕生した理由と言えるかもしれない。

◆東北、新潟、大阪、アメリカ直輸入?…日本全国で産声をあげる新リーグ、新プロ野球球団

 昨年、プロ野球のチームは減りそうになったけど、日本全国各地では、次々と新しいリーグや球団をつくろうとする動きが起こり始めたんだ。
 東北では、市民団体「仙台市民球団企業組合」が「東北独立リーグ構想」を打ち出した。東北各県のチームによるリーグ戦を来年4月にスタートさせ、その下には県リーグや地域リーグを置く。
 同じく来年4月の開幕を予定しているのが、アメリカ独立リーグの日本版。アメリカ独立リーグのコミッショナーたちが、アメリカ以外にも独立リーグをつくって、優勝チーム同士の「世界選手権」を行おうとしているんだ。野球解説者の江本孟紀さんが、独立リーグ「カルガリー・フォース」のスペシャルアドバイザーに就任したのも、そのノウハウをもとに、日本版独立リーグのコミッショナーになるためともいわれている。

 また、新しい動きは大阪でも起きている。それは、市民100万人から1万円ずつ出資を募り、新球団を設立しようというもの。関西圏の企業には、選手個人のスポンサーになってもらい、選手を自社の宣伝に利用することができるようにするという。
 新潟でも「県民球団を創る会」が設立され、2008年からのプロ野球新規参入を目指して日本プロ野球機構に球団数の増加などを要請していくという。球団名は、サッカーと同じ「新潟アルビレックス」になる予定だ。
 こういった全国各地の動きに共通しているのが、地域との共生だ。これまでのように、親会社に頼ったプロ野球や社会人野球のシステムは、限界を迎えている。ひとつの会社では、野球チームを支えきれなくて、さまざまな仕組みで、地元の人々に支えられるチームづくりを目指すのは、自然なことといえるんだ。

近い将来、週末になると、日本全国のあちこちで、いろんなプロ野球リーグの試合が行われるようになるかもしれない。そして地元の人々が地元のチームを応援するようになれば、日本の野球はもっと楽しくなりそうだ。

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