ラグビーでは、どうして前にパスしてはいけないの?
質問者:「オタッキー さん/15歳」

.ボールより前にいる選手にパスすることは、「オフサイド」の位置にいる選手へのパスだから反則になった。

◆ひきょうな行為、オフサイド

 ラグビーで前にパスしてはいけないというルール(スローフォワードという反則)は、Q.11で話したオフサイドの考え方に関係している。だから、まずオフサイドのルールがどんなふうにして生まれたかを振り返ってみよう。
 今のサッカーやラグビーの元になった「フットボール」は、500人対500人といった大人数で、村中、街中をつかってする「遊び」(球戯)だった。そして、勝負は「1点先取」(ボールがゴールに到達すること)で決まった。
 1点先取で勝負決まるのに、相手チーム陣地に入り込み、相手選手のなかに紛れて隠れるようにしてゴール前でパスを受け、一気にゴールをしてしまう人間が出ると、あっという間に決着がついてしまう。それで早く「遊び」が終わってしまっては、面白くない。おまけに、自分のチームの側(=サイド)を離れて(オフして)相手チームの側に紛れ込むような行為は、卑怯(ひきょう)な行為として嫌われ、非難され、軽蔑もされた。もしもそれが見つかったら、何をされるかわからない(相手選手にぶん殴られるような)行為だったんだ。
 このフットボールは、次第にイギリスのパブリックスクールとよばれる学校の校庭で行われるようになっていく。学校には色々な地域から生徒が集まってくるし、それぞれの地域でフットボールのルールはまちまちだった。だから、学校でプレーするために、学校内の統一ルールが決められるようになったんだ。そのときオフサイドは、競技をつまらなくする卑怯な反則として、ルールに残ったんだ。

◆スローフォワードとノックオンは兄弟

 ラグビーのオフサイドは、サッカーのオフサイドよりも、もともとの「フットボール」のルールに近い。ラグビーでは、選手がボールの位置より前にいることを、すべて「オフサイドの位置にいる」という。
 オフサイドの位置にいる選手が、自分たちの側(ボールの後ろ)に戻らずにボールに触れたり、相手の選手を妨害するとオフサイドの反則になる。ラグビーのように、選手がボールに密集する競技で、もしオフサイドの位置にいる選手がプレーに参加したらどうなるかな。敵の選手にとっては、後ろからぶつかられることになって、すごく危険だし、卑怯な行為に思えるよね。だから、基本的にボールより前方にいる選手は、プレーに参加しちゃいけないことになっている。
 だから、オフサイドの位置へ、つまり、ボールより前方(=フォワード)へボールを投げる(=スロー)ことは、プレーに参加する資格のない選手をプレーに参加させてしまうパスとして、反則になるんだ。
 このスローフォワードの延長線上にある反則が、ノックオンだ。
 ノックオンとは、ボールを持っているプレイヤーやパスを受けようとしたプレイヤーが、ボールを前方に落としてはいけないというルール。ボールを前方に落とすだけで反則というのは厳しすぎるようにも思えるが、このルールがないと、ボールをわざと落として(遠くまではじいて)、前方にいる(=オフサイドの位置にいる)味方にボールをわたす選手が出てきかねない。ボールを落とすこと(はじくこと)と、パスすることは、区別を付けにくいこともある。だから、「ノックオンは反則」というルールがあるんだ。

◆ルールの抜け道が発見されるたびに、スポーツは進化する

 スポーツでは、ルールの抜け道を利用したプレーによって、ルールが変更されることはよくある。サッカーやラグビーでは、それほど多いことではないけれど、野球では山ほどあるんだ。
 例えば、打撃妨害のルール。昔のルールでは、ピッチャーの投げたボールをバッターが打とうとするのを「キャッチャー」が邪魔することが、打撃妨害だった。ところがある時、ランナーが三塁にいて、スクイズをした場面で、一塁手がバッターの前までダッシュしてきて、バントされる前にボールを取ってしまう、という事件が起きた。そして一塁手は、三塁からホームへ走ってきた走者にタッチしてアウトにした。
 バッターと攻撃側の監督は、当然「打撃妨害だ」と抗議した。が、一塁手は「いまのは牽制球だった」と反論した。そのときは、まさかキャッチャー以外の野手が、バッターの打撃を妨害するなんて、誰も思っていなかったから、このときは「牽制球で走者のアウト」が認められてしまった。でも、誰がどう見ても「打撃妨害」と思える行為だったので、その後ルールは変更されて、「捕手またはその他の野手が、打撃を妨害した場合」は「打撃妨害」として「打者に一塁への進塁が与えられる」となったんだ。
 他にも、走者が三塁にいて打者が外野フライを打ちあげ、走者がタッチアップで(外野手がキャッチしたのを確認して)走り出そうとしたケースで、外野手がボールをキャッチしないで、バレーボールのトスようにボールをはじき返しながら、内野の方まで進んできたことがあった。そのときのルールでは、「野手がフライを捕球」すれば「走者は塁を離れて次の塁を目指すことができる」と書かれていた。だから、この外野手は「捕球」をしなかったんだ。でも、これをみんながやるようになると、タッチアップなんてできなくなってしまうよね。そこで、これもルールが変わって、野手がはじめてボールに触れた段階でタッチアップして(塁を離れて)よいことになった。
 こんなふうに、ルールの抜け道を利用するのは、ズルイことかもしれないけれど、ルールをよく読んで考える力がないと、なかなか思いつくことじゃない。そういう頭の回転が良い選手によってルールの抜け道が発見されるたびに、より公正に競えるようにルールが変えられてきたわけなんだ。
 ルールブックをきちんと読んでいるスポーツマンは、じつはあまり多くないけれど(リトルリーグで野球をやってるキミも、野球のルールブックを読んでないだろ?)、スポーツをしようとするなら、自分のするスポーツのルールブックをよく読んでみてほしい。もしかしたら、すばらしい抜け道が見けることができて、キミの力でルールが変えられること(もっとスポーツが面白くなること)につながるかもしれないよ。

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