「選手もファンも、みんなが反対しているのに、プロ野球の偉い人たちは、どうして1リーグにしようとしているのですか? また、サッカーはチームがたくさんあるのに、野球はどうしてチームの数を少なくしようとするのですか?」
質問者:「大根おろし さん/11歳」

.1リーグにして、セ・リーグの人気チームと試合をすることで、利益をあげたいと考えている人がいるからだ。

 みんなよく知っていると思うけれど、今年の6月に、バファローズとブルーウェーブの合併の話が明らかになってから、プロ野球の世界は大きく揺らぎだした。みんなもどうなるのか、心配しているだろうね。そこで、今回と次回の2度にわたって、プロ野球の何が問題なのか、どうなっていったらいいのかを考えてみよう。

◆ジャイアンツの人気に頼りたいパ・リーグ

 Q.34でも話をしたことだけれど、パ・リーグの6球団は、すべて赤字経営といわれている。その理由は、セ・リーグが(特にジャイアンツが)全国的に人気を持っていることだったよね。日本中にファンのいるジャイアンツは、全国ネットでテレビ放送されて、たくさんの人が観る。だから、ジャイアンツ戦を放送するため、テレビ局がホームチームに支払う放映権料は、パ・リーグの試合の約10倍以上、1試合1億円といわれている。

 パ・リーグのオーナーの人たちは、ジャイアンツと試合をすることで、この高い放映権料をもらいたいと考えているんだ。もちろん、ジャイアンツやタイガースといった人気チームとの試合で、観客も増加するだろう。ただ、12チームで1リーグとなると、今は1つの対戦相手につき28試合あるのが、半分以下の12試合か13試合になってしまう。それでは、利益が減ってしまうので、バファローズとブルーウェーブの他に、もう1組合併することで10チームとし、チーム数を減らす一方、人気チームとの対戦は減らさないでおこう、と考えたのだろう。

 ジャイアンツも、1リーグになることにメリットがあると考えている。それは、パ・リーグのチームと新たな対戦ができることで、最近低迷しているジャイアンツ戦のテレビ視聴率が回復すると考えられるからなんだ。試合が、常に日本全国に放送されることで、全国的に大きな人気をジャイアンツは獲得してきた。ジャイアンツの親会社になっている新聞社は、そのジャイアンツの人気もあって、日本全国に新聞の購読者を増やしてきたんだ。だから、それを今後も維持するためにも、ジャイアンツの人気が下がらないようにしたいと考えている。

 もしも1リーグになったとすれば、ジャイアンツと試合をすることで10億円程度収入が増えるといわれている。でも、それだけでは、パ・リーグの人たちのいっている30億円や40億円の赤字は解消できない。足りない分は、いったい、どうするんだろう?

 それだけじゃない。ジャイアンツの人気だけに頼っていくかたちで、10年先、20年先のプロ野球は大丈夫なのだろうか?

 以前は20%を超えるのが当たり前だったジャイアンツ戦の視聴率も、今では10%以下になることも珍しくない(今年は5%を切ったこともあった)。そうなると、だんだんテレビ局だって高い放映権料を出そうと思わなくなるはず。それでは、パ・リーグのオーナーの人たちが思うような収入は、入ってこなくなる。そのとき、どうするつもりなのだろう?

 こんな疑問に対して、オーナーや、球団経営にたずさわっている人たちの議論には、残念ながら将来の設計図が見えない。この連載で何度か「今のプロ野球界には、将来の設計図がない」と話してきたけれど、その結果が、今回の合併問題へとつながっているのは明らかだよね。これまで、将来のことが何も話し合われてこなかったから、バファローズとブルーウェーブの合併という最悪の事態に対しても、それを避ける対策が出てこなかった。IT企業という今までにない新しい分野から球団を買いたいと申し出があっても、それを承認しようとしない。それも、将来の設計図がないまま、ジャイアンツの人気に頼る応急処置ですまそうとしているからだ。

 いや、今回の合併の話から1リーグ制への急な動きを考えると、「ジャイアンツに頼った1リーグ制への移行」という考えは、かなり以前から一部の人たちの頭の中にあったのかもしれない。

◆企業に所有されるプロ野球の将来は、誰にもわからない

 でも、どうして、今のプロ野球界を動かしている人々は、将来の設計図を描けないんだろう?

 それは、今のプロ野球チームが、すべて企業に所有されているからなんだ。今のプロ野球は、球団を所有している人たち、つまり、オーナーの人たちによって動かされている。そのオーナーに任されて球団を運営する部下の人たちは、球団を所有する企業から派遣された人が大半なんだ。その人たちは、2〜3年程度の短い期間で親会社に戻ってしまう。それぐらいの期間だと、その人たちがいくら頑張ったとしても、自分の球団やプロ野球の問題点を理解したころには、親会社に戻ることになる。それでは、自分の球団を毎年どうするかを考えるのに手一杯で、なかなかプロ野球界全体の10年先、20年先を考えた設計図は描けない。

 さらに、球団オーナーの人たちは、プロ野球チームを所有することが、親会社の利益になるよう考えている。だから、オーナーの人たちにとっては、球団よりも自分の会社のほうが大事な存在といえるんだ。

 会社の経営をどうするかは、会社の社長や重役たちが決める。その会社で働く従業員やその会社の商品を買う消費者は、その決定にかかわることができない。だから、オーナーの人たちは、合併の話も1リーグ制の話も、自分たちとその部下の人たちが、話し合って決めてればいい、選手(=従業員)やファン(=消費者)がかかわる必要はない、と考えているんだ。でも、従業員(選手)が気持ちよく働いて(プレーして)、消費者(ファン)が喜ばないと、商品は売れない(観客は増えず、視聴率もあがらない)はずなんだけど……。

 また、各球団がどんなふうにお金を使っているかということを公表していないから、外からは、経営上の問題点が、見えないんだ。例えば、30億円の赤字があるパ・リーグのある球団では、観客からの入場料で年間30億円の収入があるといわれている。一方で、選手に支払う年俸の合計が20億円。球場の使用料が6億円。球団を運営していくのに必要な経費が10億円だとすると、これらを足し合わせると36億円の支出になるから、赤字は36−30=6億円のはず。あと24億円もの赤字は、どうやって出たんだろう? それだけの赤字が出るのだから、何か大問題を抱えているんだろうけれど、それがどんな問題なのか、わからない。

 今話してきたように、プロ野球を運営する人たちには将来の設計図がないし、各球団がどんな問題を抱えているか、外からはわからない。これでは、1リーグ制か2リーグ制か結論が出たとしても、今のまま企業に所有されていく限り、プロ野球の内部で何が起こっているのかわからないままだ。だから、企業に所有される形のプロ野球の将来は、どうなっていくのか、誰にもまったくわからないんだ。

 こんなことでは、1リーグ制がいいか、2リーグ制のままがいいか、プロ野球の将来はどうすればいいのか……といった議論もできないはずなんだけど……。

 では、次回は、プロ野球がもっと発展するには、どうしたらいいのか考えていこう。

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