「横綱朝青龍をはじめ、モンゴル出身の力士が活躍するようになったのはどうしてですか?」
質問者:「ちゃんこ さん/13歳」

.モンゴルは相撲のふるさと。そのうえ、けいこを重ねて日本の相撲文化の特色を吸収したからだ。

◆力士は大相撲という文化の担い手

 横綱朝青龍を筆頭に、モンゴル出身力士が活躍できる理由について、色々言われているけれど、言える答えは一つ。強くなるために、十分に稽古(けいこ)を重ねたからだ。当たり前だって? でも、大相撲は、強い力士になる素質を持った人が集まる世界だから、モンゴル出身だろうが、日本人だろうが、ヨーロッパや南米の出身だろうが、自分の持っている素質をみがいた力士が活躍できるんだ。
 それなのに、「外国人力士の活躍は日本伝統文化の崩壊だ」なんていう人もいる。でも本当にそうなのかな? モンゴル出身力士をはじめ、他の国出身の外国人力士たちも、日本人力士と同じように、みんなちょんまげを結って、着物を着て、ちゃんこを食べ、日本語を話しているよね。稽古では、すり足や四股をふみ、鉄砲をする。取り組みの時は、力水をつけてもらい、清めの塩をまく。彼らの1人1人が、日常生活でも土俵の上でも日本の文化、大相撲という文化をささえているんだ。だから、日本伝統文化の崩壊だなんて、見当はずれだ。

◆モンゴルで生まれ、中国から日本に伝わった相撲

 それに、日本の国技といわれる相撲だけれど、そのルーツを調べると、日本で生まれたものではないんだ。もともと相撲発祥の地は、今のモンゴルを中心とした地域だといわれている。中国で出土した2200年〜2300年前の装飾品から、当時その地域を支配していた騎馬民族が、今の「モンゴル相撲」にとてもよく似た格闘技をしていたことがわかっている。彼らはたびたび、中国に攻め込んでいたから、そのとき中国にも伝わったのかもしれない。今から2000年ぐらい前には、ちょんまげのように髪を結び、まわしのように腰に帯をまいて行う格闘技が中国で行われるようになっていたんだ。それが、日本に伝わったと考えられている。
 だから、日本の相撲には、モンゴルや中国の相撲の影響が残っているんだ。例えば、「立合い」だ。モンゴル相撲に代表される騎馬民族の相撲は、最初から立ったまま、組んで相撲を始める。一方、日本では、手をついて「ハッキヨイ、ノコッタ」で始まるよね。でも、そういう「立合い」になったのは江戸時代からで、それ以前の日本の相撲も、立ったままぶつかっていたんだ。それで「立合い」というわけだ。
 中国の影響は、土俵の上にある屋根にもみることができる。土俵の屋根の四隅には、それぞれ青房、赤房、白房、黒房(房とは多くの糸を束ねたもの)がつるされているのを知っているかな? それぞれの色は、東の守り神の青い龍(青龍=せいりゅう)、南の守り神の赤い鳥(朱雀=すじゃく)、西の守り神の白い虎(白虎=びゃっこ)、北の守り神の黒い亀(玄武=げんぶ)を意味していて、これは中国の宇宙観をあらわしているんだ。
 また、龍と虎は、「龍虎(りゅうこ)相打つ」「龍虎の争い」という言葉があるように、古くから力のある2人の戦いのたとえとして、よく使われてきた。そこで大相撲も、「龍虎の争い=東西の争い」として、東と西の力士が戦うことになったんだ。

◆土俵は丸いから無限

 一方、日本独自に発達したものとしては、土俵がある。
 土俵が生まれたのは、戦国時代末期から江戸時代の初期だといわれている。それまでは、人が取り囲む中で、土俵なし(だから、寄り切りはなし)で、相撲は行われていた。それが、四つのすみに柱を立て、それらをヒモで結び、四角に区切るようになったんだ。なんだか、ボクシングのリングに似ているよね。実は、ボクシングも昔、丸い円の中でやっていたんだ。その周りを観客が取り囲んでいた。だから、ボクシングをする場は、リング(「丸い」という意味)になったわけだ。それが、ロープを張るようになって、ロープを丸く張るのは難しいから、リングが四角になった。
 そこからボクシングのリングは、四角いまま発展し、コーナーに追いつめるといった新しいテクニックが生まれた。一方で、相撲の土俵が丸くなったのは、「土俵」という言葉にあるとおり、ヒモの代わりに、「俵」を使うようになったからなんだ。ヒモを丸く空中に浮かせるのは難しいけど、小さな俵を地面にならべれば、円は簡単に作れるよね。
 じゃあ、どうして円にしたんだろう? それは、円なら無限に逃げ回れるからなんだ。四角いと、角に追いつめられると逃げ場がなくなる。でも、円ならば、俵伝いにまわりこめば、どこまで行っても外に出ることがない。だから、 土俵は丸くなっていることで、俵によって内側と外側を区切っていると同時に、無限に動き回れる空間になっているわけなんだ。
 定住生活をおこない、外と内の区切りを持つという中国などの農耕民族の特徴と、定住せずに草原をかけまわったモンゴルなど騎馬民族の特徴の両方が一緒に存在する場所が、土俵といえるかもしれないね。
 この土俵の特色が、押したり寄ったり、引いたり、投げたり、つり上げたり、一つの勝負ごとに戦い方の無限な可能性を生み出しているんだ。モンゴル相撲のような投げ技や足技も、日本の大相撲独特の「寄り切り」や「押し出し」もできる朝青龍は、土俵の持つ無限の可能性を、稽古や本場所の取り組みの中で誰よりも理解していったから、横綱として活躍できるのだろうね。

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