「松井選手が代理人と契約したというニュースを見ましたが、代理人って何をやる人でなぜ必要なんですか?」
質問者:「僕もメジャーに行くぞ!/14歳」
代理人とは契約交渉のプロ。選手にとって必要な存在にもかかわらず、日本のプロ野球界ではあまり認められていないのが現状だ。

◆ 代理人は契約交渉のプロ

 プロ野球の代理人とは、芸能人で言うマネージャーのことなんだ。マネージャーは仕事とお金の交渉を全て行うね。テレビや雑誌、ラジオの出演交渉をし、出演料をいくらにするかを一番いい条件で話をつけてくるのが仕事。いわば、交渉のプロといったところだ。
 なぜマネージャという他人に任せ、自分でギャラ交渉をしないのかというと、自分で自分の値段を決める(=自分を評価する)ことなんて、君はできるかな?「自分は素晴らしいから、給料を上げてください」とはなかなか言いにくいと思う。まして、遠慮深さが特徴の日本人のことだ。相手の提示額に対して、文句を言ったり反論することは「みっともないこと」だと思いがちだから、相手に素直に応じてしまうだろう。ひょっとすると、みずから自分の値段を下げる場合だってある。

 プロ野球の代理人も、選手の給料を決める重要な人物だ。マネージャーはその「遠慮」を取り去って、「一人の人間を評価する」という目的で、交渉にのぞむことができるね。選手は、交渉の報酬として、代理人に給料を払う。代理人は選手になくてはならない、大事な存在なんだよ。
 ヤンキースに決まった松井選手は、最初は代理人を起用しないと言っていたね。でも、それは不可能な話。第一、松井選手は英語をどこまで理解できるだろうか? 彼がどんなに英語を勉強しても、大リーグの契約書は「電話帳並み」とも言われている。何試合以上出場したらどれだけボーナスが出るとか、オールスター戦やワールドシリーズに出場したときのボーナスだけでなく、遠征先のホテルの費用・昼食の費用から球場へ自家用車で行く場合のガソリン代まで、契約書には細かく書かれていると言うよ。松井選手じゃなくても、そのひとつひとつを英語で話し合い、うまい交渉をするかなんて、とてもじゃないけど、できることじゃないね。結局のところ、代理人を起用してヤンキースに決まったのは、喜ばしいことだけれど。


◆代理人が許されない日本のプロ野球
 野球選手にとっては、絶対に欠かせないともいえる代理人。ところが、非常に残念なことに日本のプロ野球界は、代理人に対して否定的なんだ。日本では2000年に、代理人制度が成立したけれど「代理人は弁護士ではなければならない」とか「一人の代理人は一人の選手だけしか契約してはいけない」とか、意味のわからない規定がある。おまけに、代理人を起用した選手に意地悪をし、代理人を起用しなかった選手にはボーナスを与えたりということまで行われているというから、ひどいものだ。

 また、読売ジャイアンツは、代理人を絶対に認めようとしないよ。「代理人をつけたら、年棒の20パーセント削減をする」と読売ジャイアンツのオーナーは堂々と言い放ったそうだし、今回、契約更改で上原選手が代理人を起用しようとしたけれど、読売側が拒否してしまった。これは、明らかに基本的人権の侵害だよね。正式な裁判で争えば、プロ野球側が負けてしまうだろう。
 けれど、裁判となるとマスコミの標的にされる。選手としては当たり前のことをしているはずなのに、「こどもたちに夢を与える選手にふさわしくない」だの「みっともない」だのと騒がれ、選手の評価が逆に下がってしまうだろう。そうなると、選手生命にも関わってしまうことだから、選手はプロ野球界(球団)に対して、なかなか抵抗できないんだよ。
 マスコミは、契約更改で何度も交渉している選手にさえも、すぐに「交渉が難航」「もめごと」とあおるね。交渉は長くて当たり前。じっくり時間をかけるのは何もおかしいことではないのにね。

 今でも、実際に代理人を起用して交渉に臨む選手は非常に少ない。悲しいことだけれど、選手たちが代理人交渉を諦めてしまっているところもある。
 だけど、大リーグもかつてはそうだったんだ。選手はお金を稼ぐための道具としてしか扱われていなかったんだ。けれど、今では「電話帳」とも言われる事細かな契約書が存在する。それは選手たちが勝ち取ってきた「権利」の結晶でもあるんだ。
 日本の代理人制度は、1992年、ヤクルトスワローズの古田敦也選手が始めて代理人を起用したことがきっかけになった。
 このとても意味のある行動を、これから、選手たちが団結して生かせることができるか?
 それは、選手たちに課せられた闘いでもある。日本のプロ野球の将来を切り開くのは、選手たち自身なのだから。

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