1999/10/10(SUN)
 女子アナブームである。猫も杓子も「女子アナ」。以前、看護婦さんブーム、スッチーブームとあったが、 今度は女性アナウンサーだったか。しかもスポーツ番組は注目度が高い。お固いNHKでも注目されている。 それほどスポーツが注目されているのか、色物と思われているのか知らないが(これがスポーツを愛する 私にとっては一番悲しいことだが)、女子大生の就職活動OB訪問を受けているとよく分かる。 訪ねてくる女子大生のほとんどが「女性の立場を生かして、プロ野球選手などの本音を聞きたい」と語る。

  恐ろしい。知らぬが仏とはこういうことを言う。女性だからって、男の選手が本音を言うかというと、しゃべら ないでしょう普通。可愛い子であればあるほど、男の人ってカッコつけるんじゃないか?そりゃ男性の記者よりも寄ってきます、最初だけは。でも「・・・ちゃん、こんにちは」って言ってもらうためだけに球場に何時間 も立ってたとしたら、それはもったいないでしょう。正直言って、ほんとにほんとに本音を聞き出すには、男性の方が早いと思います。だって二人きりで話できるじゃないですか、呑みに行けるじゃないですか。 と、 放送を職業に選び、どんな仕事でも目標はインタビュー。自分にしか話してくれない何かを聞き出す、ということを願い、足掻いている私にとっては、男性のスポーツ界は実は厄介なところなのです。

 サンデースポーツという番組は、スポーツの結果からだけでは見えない、作戦、駆け引き、選手の想い、 たった一つの勝負を決めたプレー、そしてそこに至るまでの過程を探っていこうとしている番組です。だから そんなに選手の親しげな表情は必要ないわけです。そのかわり、その競技について、その選手について、 そのプレーについてかなり深い取材をしなければなりません。結構プレッシャーがかかります。こちらは素 人で、150キロのボールを投げたことも打ったこともないのですから。でも素人には素人なりの発見がある と信じています。

 私がいつも取材で心がけているのは、どんな競技を見るときも、どんな選手を見るときでも、思いつく限 りの違う角度から眺め、疑問を質問を探すことです。よく「調子はどうですか?」という質問がありますが、なるほど聞きやすい質問ではありますが、聞かれた方は困るだろうなと思います。ピッチャーが試合前に「調 子悪いんですよ。肘が上がらなくて、ストレートが走らないんです」なんていいません。結局お決まりの雰囲 気Q&Aで「調子いいっす。全力でがんばります!」とか言わせてしまう。

 それでは雰囲気は出るけれども、誰も何も本当のことを話してない聞いてないことになる。そういう映像 に言葉に視聴者は慣らされてしまう。作る方も慣れてしまう。それが一番怖いと思います。スポーツは勝ち 負けを競うという、目的は至極単純なものだけれども、その内容は我々が思う以上に深く、変化に富んだも のだと思います。その素晴らしさ、美しさ、厳しさ、そこにあるドラマ、それを現場で取材できる我々が見つ ける努力をしなければ、スポーツファンに結果とヒーローのお決まりのお立ち台インタビューしか届けられ なくなる。

 スポーツの真の素晴らしさを一つでも多く、少しでも深く探り伝えたい。女子アナだろうがイグアナだろう がいいんです。結局はスポーツを本当に知りたい気持ちなんだと信じて、今日も現場に向かいます。


 追伸)この原稿を同僚に見せたら、「お前は選手に女だと思われてないよ」というはなむけの言葉をいただきました。そうか、だから選手がニヤニヤすることなく至極まじめに答えてくれるのか・・。と気づきました。 これからのスポーツキャスターは、容姿イマイチ、適齢期超過が、いいのかもしれない・・・。
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