英国、4つの国が同居する国

日本に住んでいた時は、同じ英国なのにサッカーやラグビーのワールドカップの時はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドが別々に出場するのが不思議だった。しかし、イングランドに住んで2年経った今は、北アイルランドはもとより陸続きのスコットランドやウェールズは、英国内の「地方」というより「別の国」の様なイメージで、「ユナイテッド・キングダム」という連合チームとして出場するオリンピックの方が、例外の様な気がしてくる。これは実際に英国に住んでみると、少数派のスコットランド人やウェールズ人が、いかに独自性を大切にしているかという事を、折りにふれ実感するからだろう。

この文中で「イギリス」を「英国」と書いているのも、日本在住のスコットランド出身の人が「'イギリス'という言い方は、イングランド中心の国の様な感じがするので好きじゃない。自分は'英国'という日本語の方が好きだ」と言っていたのが強く印象に残っているからだ。イングランド人の友人は「スコットランド人やウェールズ人は自分たちの文化をとても大事にしているから、逆にイングランド人のアイデンティティって何なのか、を考えさせられる」と言う。

初めてマンチェスターに行った時、買い物をした際のおつりがスコットランドのポンド紙幣だった時も驚きだった。ロンドンでは見た事が無かったし、EU諸国が共通の通貨ユーロを使っている今、英国では地域によって紙幣まで違うのが、一種のカルチャー・ショックだったのだ。しかしこういった事を踏まえると、スコットランドやウェールズに、イングランドとは別のフットボール・リーグがあることは、至極当然の事かもしれない。

イングランドのリーグは、上からプレミアシップ(20チーム)、チャンピオンシップ(24チーム)、リーグ1(24チーム)、リーグ2(24チーム)と92チームあるのに加え、ノン・リーグのカンファレンス(22チーム)もある。(注:今シーズンから旧ディヴィジョン1はチャンピオンシップ、ディヴィジョン2はリーグ1、ディヴィジョン3はリーグ2に名称が変わった)一方、スコットランドでもプレミアリーグ(12チーム)、ディヴィジョン1(10チーム)、ディヴィジョン2(10チーム)、ディヴィジョン3(10チーム)があり、ウェールズにもプレミアリーグ(18チーム)がある。

英国の総人口は約6000万人だが、スコットランドの人口は約500万人のため、ディヴィジョン3ともなると、各試合の観客動員は1000人にも満たない。それでも観客数、得点者、順位表等はちゃんと新聞にも載っている。「タイムズ」の日曜版のフットボールの結果(統計)のページを見ると、英国らしいな、と思う。1試合の平均観客数3万人を超えるイングランドのプレミアシップから、スコットランドの観客動員300人程の試合まで、同じページに掲載されているからだ。多数派と少数派が共存する紙面―それは英国の国旗(ユニオン・ジャック)のデザインの中に、イングランドの国旗(白地に赤い十字)とスコットランドの国旗(紺地に白い斜め十字)が「共存」しているのに似ている。

松本雪子:英国発

「スコットランドのグラスゴーには5万人収容できるスタジアムが3つもある。写真はハンプデン・パーク」(C)NANO association co.,ltd.
「スコットランドのグラスゴーには5万人収容できるスタジアムが3つもある。写真はハンプデン・パーク」 (C)NANO association co.,ltd.
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