突然死と、噂されるドーピング

私はドーピングについて詳しく知るわけではない。昨年から相次ぐスポーツ選手たちの「突然死」の原因がドーピングなのか、それとも全くの自然死なのかも分からない。ただドーピング問題がスポーツに落す影は非常に大きいということは、はっきりと感じている。そしてそれが時に人間の生死にかかわるということも。

2003年6月
自転車選手 
睡眠中に心臓停止、死亡数週間前の検査で心臓異常が認められていた

2003年6月
サッカー選手 
試合中に心臓麻痺で死亡、数日前から体調不調を訴えていた

2004年1月
サッカー選手
試合中に心臓停止、元々心臓疾患があったとも言われている

2004年2月
自転車選手
睡眠中に心臓停止

2004年2月
自転車選手
ホテルの一室で肺と脳の浮腫による心停止、医薬品の取りすぎ、もしくはオーバードーズの疑いあり

最後の自転車選手に関しては、おそらく「ドーピング」が直接的な死の原因ではない。ただその選手は1999年のジロ(ツール・ド・イタリア)で「ドーピング」の判定を下されて失格、その後の長い裁判とメディアによる批判の声に押し潰された末の悲劇的な結果だけに、ドーピング犠牲者の1人と考えてもよいだろう。もちろん彼が本当にドーピングしていたのかどうか、また上述の選手たちがドーピングによる死亡なのかどうかは、専門家でさえも判断が難しいようだ。ただし若いスポーツ選手がこんな風に突然死してしまったら、当然のようにドーピングの噂があちこちでささやかれる。そして選手の名誉を守ってくれるかもしれない真実は、永遠に闇の中に葬り去られたまま。

ところでフランスでのドーピング事情について、フランスの民間法医学研究所で血液・尿検査を担当している知人に話を聞いたことがある。1998年にツール・ド・フランスをゆるがせた「フェスティナ事件」に関しては、何のためらいもなく「100%ドーピングだった」と断言する彼女。ただしここ数年のドーピング案件に関しては「難しくなった」と少々言葉を濁しながら、現状を語ってくれた。

「以前は限りなく禁止薬物に近い成分が検出されても、それが正式な『禁止薬物』でない場合は『白』だった。ただし去年からはそれを『黒』とみなすことが決定された。そしてこれがますます巧妙なドーピング隠しを増長させる結果となっている。例えば全く尿に成分が検出されない薬品の開発。成分が検出されないだけに、これが人体にどんな影響を及ぼすのかを調査することすら出来ない。また例えば、シーズンオフに集中したドーピング剤の使用。血管を広げるため、筋肉を増強するためだけならばこれだけでも十分に効果が出る。そしてシーズン中に、血液と尿から成分が検出されることはない。髪と爪にも成分は残るが、これも切ってしまえば証拠隠滅。しかし禁止薬物を短期間で集中的に使用することは、当然肉体への負担は非常に大きい。」

2004年1月、サッカー国際連盟FIFAが、世界反ドーピング規定を正式に採択することを決定した。プロサッカー界も、ようやくアンチ・ドーピング対策に本格的に乗り出すこととなる。そしてこれにてこの反ドーピング規定を採択していない五輪競技は、ようやく残り1競技となったそうである。その残る最後の競技とは、自転車競技――。昨年から突然死の選手を出している2つのスポーツが、後手に回ってしまったのは、単なる偶然なのだろうか。

そして現在も、フランスの自転車チーム「コフィディス」の選手・元選手数人が、禁止薬品の売買取引に関わっているとして司法の手による取調べを受けている。これが原因で解雇されたゴーモン元選手は、アマ時代の92年には五輪で銅メダルを取るほどの実力ある選手だ。しかしプロ転向以降、成績とお金だけがモノを言う世界で、ドーピングへの一歩を踏み出さざるをえなかったと告白している。「将来生まれてくる自分の子供の健康さえ不安」に感じながら。

※overdose:薬の飲み(盛り)過ぎ

Reported by 宮本あさか

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