ラグビークラブの「セクシー」戦略

「セクシー」――フランスの広告業界で重要視されている要素である。さすが「アムール(愛)」の国。ただしこれは過激な露出主義を指しているのではなく、大人のアバンチュール気分を刺激するような、あくまでスマートで(時にはコミカルな)セクシーさ。こうして連日TVのコマーシャルには、見つめあい、誘惑しあい、感じあう大人の男女の姿が繰り返し現れている。

そしてこの「セクシー」戦略を取り入れたスポーツクラブがある。パリを本拠地に持つラグビーチーム「スタッド・フランセ」である。

長い伝統を持つ国内2部チーム2つが1995年に合併し、新しく生まれ変わったチーム。当然2部リーグからスタートを切ったが、2003年にはフランス国内リーグ「トップ16」で優勝を飾る。さらにフランス代表にも数人の選手を送り込み、国内では確固たる実力と地位を築きあげた。またこれまでのフランスラグビー勢力は南西部ばかりに固まっており、すなわちラグビー人気も「地方」に留まっていたのだが、首都パリのクラブであるスタッド・フランセがラグビー人気を「全国区」へと押し上げる役割も果たしてくれた。そしてこのクラブが取った人気獲得戦略のひとつこそが、いわゆるセクシー戦略なのである。

2000年末、スタッド・フランセは衝撃的なカレンダーを発売した。「デュー・ドゥ・スタッド(Dieux du Stade=スタジアムの神々)」と命名されたカレンダーの中身は、所属選手たちのモノクロ「セミヌード」。鍛えられた肉体の写真が書店にずらりと並んでいた日には、さすがの私も赤面してしまったものだ。もちろんこんな格好のネタをメディアが取り上げない訳はない。こうしてTVや雑誌では連日のように「芸術的」「美的」「スキャンダル」などのコメントが飛び交い、それと共にスタッド・フランセの名前やヌードになった選手たちの名前が連呼されることになる。

つまり衝撃的なカレンダーは、売上部数うんぬんに関係なく、スタッド・フランセというクラブの存在を十分にアピールする宣伝材料となった。また、このおかげで露出度の高いサッカーに比べて、地味な存在であったラグビーたちにも注目が集まりだした。フランスでは「ラグビーファン=元プレイヤー」という図式が成り立っているのだが、これで一般のスポーツファン、特に女性がラグビーを意識し始めたのは間違いない。(ただし女性達はあくまでもラグビー「選手」を魅力的な存在として認識しただけで、彼女たちがすぐにラグビーというスポーツのファンになるのかといえば話は別なのかもしれないが。)

そして2003年末。例のカレンダーが発売される季節である。今回で4年連続となるこの企画では、なんとスタッド・フランセは単なる一クラブの枠をあっさりと破り捨ててしまった。なんと7人もの「他」クラブのラグビー選手を起用。こうしてクラブ所属選手でありフランス代表キャプテン「大人の渋い色気」が魅力のファビアン・ガルティエ以外にも、見どころいっぱい(?)…となったわけである。ちなみに2003年ラグビーW杯で一気名を挙げ、フランス女性達の間で「セクシー」と囁かれ始めているトゥールーズ所属の若く美しき天才フレデリック・ミシャラクも参加しているとのこと。カレンダーの売上は、フランス代表の活躍と共に一気に上昇したことだろう。

さらに今年のカレンダーで驚くべきは、単なる一クラブの枠を超えただけでなく、「ラグビー」の枠も超えてしまったという点。大胆なことに、サッカー選手2名(パリ・サンジェルマン所属)、陸上選手2名、レスリング選手1名、そして柔道選手1名(2003年ミスター・フランスでもある)が、ラグビー選手たちに混ざってセミヌードを披露しているのだ。実はパリSGの選手は昨年も誘われその時点では断ったそうだが、今年は二つ返事で参加。決して「イロモノ」などではなく、すぐれた写真集として高く評価されていることに感銘しての参加決意、らしい。

こうしてスタッド・フランセのセクシー戦略カレンダーは、あらゆるスポーツに携わる人間の肉体美を表現する芸術作品として見事に昇華してみせた。その少々大げさなタイトル――「デュー・ドゥ・スタッド(Dieux du Stade=スタジアムの神々)」――も、今や十分似つかわしく思えるから不思議だ。ただしこれに比例してスタッド・フランセ側の商魂も膨らみ、ついに写真撮影シーンも「DVD」化して売りだされることになったそうだが…。

Reported by 宮本あさか:パリ発

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