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アメリカの国技というと語弊があるかもしれないが、国民の娯楽として常に人々から愛されてきたスポーツは何をおいてもベースボールであろう。近年、フットボールに「最も人気のあるスポーツ」の座を明け渡してはいるが、やはりベースボールはアメリカ人に特別な意味を持っているのではないか。メジャーリーグよりもむしろマイナーリーグの試合を見に行くとそんな風に思う。
筆者が生活するオレゴン州ユージーンにはMLBサンディエゴ・パドレス傘下の1Aチーム、ユージーン・エメラルズがフランチャイズを置く。簡単にアメリカのベースボールの構造を説明すると、トップに君臨するのがイチローや松井が活躍するメジャーリーグ。その下は全てマイナーリーグになるのだが、その中でも最もメジャーに近いのが元オリックスの田口や現時点で新庄がプレーしている3A、続いて2A、1Aと徐々にランクが下がり、3Aから1Aまでで約150のチームが存在する。
エメラルズは1Aの中でも「ショートシーズン制」をしくリーグに所属しており、プロになったばかりのルーキーから構成されるルーキーリーグを除けば最もメジャーから遠いリーグと言っていいだろう。しかし、甘く見るなかれ。そのベースボールゲームには人々を癒し、興奮させ、満足させる何かがあるのである。
今回観戦に行ったのはアメリカ独立記念日の前日、毎年恒例となった花火の打ち上げがある日とあって、スタジアムは収容人員を上回る7000人以上の人であふれ返った。お決まりの国歌斉唱から試合が始まり、ゲーム、イニング間のマーケティングイベントなどメジャーリーグと同様に進められていくのだが、大リーグとは比較にならない小さなスタジアムには何とも言えないムードが漂う。
観客の多くは家族連れか友達同士で来ている人達である。小さな街の小さなスタジアム、偶然会った友人と声を掛け合う姿があちらこちらで見られる。子供達は誰とも知らない子供達とグローブを片手にスタジアムの内外を走り回ったり、食べ物を両親にねだったり。
私自身何度かこのスタジアムに足を運んだのだが、ほとんど試合の内容を覚えていない。もちろん、真剣に見れば面白い試合もあり、ベースボールそのものを楽しむ事も可能だろう。しかし、ベースボールをする選手達よりもむしろその試合を楽しそうに観戦する人達の姿の方が記憶に残っている。この「アットホーム」な空間がたまらなく心地良く、再び会場に足を運んでしまうのである。
更に、「アットホーム」とは対照的に非日常的な「何か面白い事が起こるのではないか」という期待も抱かせてくれるのがこのベースボールゲームの素晴らしさである。例えば、その日の試合後、観客は何とフィールドに降りて花火を見る事を許された。たちまちの内にフィールドは人でいっぱいになり、先ほどまでベースボールの試合が行われていた場所に人々が寝転び、子供達が走り回っている。プロフェッショナルベースボールという華やかな世界が、私たち観客の日常と融合した瞬間である。
夏の間、このユージーンのマイナーベースボールは5ドル(約600円)という値段で人々にこうした体験をさせてくれる。そのゲームを構成するもの、それはベースボールの試合の楽しみと同時に提供されるたくさんのサービス、そして観客である。スタジアムを訪れる人はただのお客さんではなく、そうした場を作り出す張本人でもあり、ベースボールの試合そのものなのである。こうした事を考えた時、ベースボールが「National
Pastime」(国民的娯楽)と呼ばれる意味がわかった気がした。
Reported by 星野太志:アメリカ発
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