トレッキングを楽しもう!

4月から8月までのイギリスは暖かな日差しとカラッとした気候の日が続き、スポーツを楽しむのに絶好のシーズンであるといえる。事実、テニスのウィンブルドンやゴルフの全英オープン、F1のイギリスGPなどメジャー大会の多くはこの季節に行われる事が多い。

今回は、この季節にぴったりで誰でも楽しめるスポーツ、トレッキングを紹介したいと思う。意外にもイギリスには富士山や日本アルプスのような高い山々がない。最高峰でもスコットランドのベン・ネヴィスの1,394mであり、大半の山は小高い丘と呼んでもいいような600m〜800m程度の高さしかなく、しかも緯度の関係で森林限界が低いために山肌に木々はなく、ムーアと呼ばれる低く切っ先の鋭い植物が生い茂るだけである。だが逆に言えば、視界を妨げる障害物がないため、少し登るだけで雄大なイギリスの大自然を手軽に楽しむことが出来るという利点もある。山の尾根に沿って頂上目指して歩くもよし、道を少し外して自分独自のルートを開拓するもよし、のんびりと草を食む野生の山羊を観賞するもよし。高度がない分、手軽かつ安全にトレッキングをスポーツとして楽しむことができるのだ。

トレッキングと聞くと、我々日本人はどうしても服装や靴などの装備から持ち物まで事前に用意するものをとっさに思い浮かべてしまうが、地元のイギリス人にとってトレッキングはそんなに面倒くさいものではない。先月、湖水地方のウィンダミアに行った際に、手ごろな山を見つけてトレッキングをしたのだが、道すがらすれ違う地元の人たちは驚くほど軽装であった。ポロシャツ、ショートパンツにウォーキングシューズとリュックサック。中にはランニング用のシャツとパンツにランニングシューズだけというツワモノもいた。そうした人たちは大抵、山岳レースの練習をしている事が多い。山岳レースとは、文字通り麓から頂上、そしてまた麓へ戻ってくる時間を競うレースである。いくら高度が低いとはいえ、斜面はきつく、足元も砂利と土で滑りやすくなっているところを全力で駆け登って降りてくるのは至難の業である。

毎年行われているこうした山岳レースの中でも、特に有名なのがスリー・ピークス・レースである。スリー・ピークスとはイングランドのヨークシャー・デイル国立公園にある三つの峰―ワーンサイド(736m)、イングレバラ(723m)、ベン・イ・ゲント(694m)―の総称であり、スリー・ピークス・レースはこの三峰を全て走って登頂する過酷なレースである。スリー・ピークス・アソシエーション(TPA)がこのレースを主催しており、今年は4月27日に行われた。参加者は600名限定で、過去3年の間にこのレースに参加したことのある人か、TPAの定める事前レースに参加した事のある18歳以上の健康な男女に限られる。参加料は8ポンド(約1,600円)。この参加条件が、興味本位の初心者が気軽に参加できないほどの過酷さを物語っている。海外から参加をする場合には、過去のレース経験や体力測定結果など詳細に渡って審査されるという。

ちなみに今年の優勝者は3時間6分27秒でこの三峰を駆け抜けた。このスリー・ピークスには去年訪れたが、急な勾配と変わりやすい天候のため、全て制覇するには2日を要した。とてもじゃないが3時間なんて無理な話である。

こうしたレースのように走って登頂する必要性はないが、イギリスに来るならば、ロンドンだけでなく是非こうした国立公園に点在するトレッキングスポットにも足を延ばしてみて欲しい。たった1時間半のトレッキングで、とびきりの雄大な景色と美味しい空気、そして達成感が味わえるのだ。

あ、くれぐれも下山後は麓にあるパブに立ち寄って、地元のビールと美味しい「パブ飯」を堪能することをお忘れなく・・・

Reported by 星見洋介:英国発

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