イタリア野球・セリエAを見に行こう

 昨年サッカーワールドカップ開催前に日本のサッカー熱が徐々に加熱し始めたころ、スポーツ記事で「小野セリエA移籍決定!」という文字を目にしたことがあった。だれもがオランダ・フェイエノールトに所属している小野伸二のことだと信じこの記事を読み始めたに違いない。記事の見出しのインパクトとしてはワールドカップを前に控え世間の目がサッカーに注がれはじめた時期だったので充分であった。しかし実際ふたを開けてみると当時の読売巨人軍に所属していた小野剛(投手)がイタリアのセリエA2の野球チーム(サン・マリーノ)に移籍するというオチがある記事であったのである。そう忘れてはいけない。野球にもセリエAがあるのである!
 
 イタリアはリーグ・スポーツがとても盛んである。世界最高峰のリーグのひとつであるサッカーの他、フットサル、バレーボール、バスケットボールなどがある。そして野球もそのひとつである。実際のところサッカー以外はアマチュアが主体だったりするが、各競技とも国内(全国)リーグが存在する。日本の実業団や社会人のように会社や学校がクラブを持ちスポンサーの役割になるのではなく、どのチームもあくまで地域性重視のクラブスタイルだ。セリエAを見ていただくとわかると思うが、各市町村の名誉を懸けた戦い。人々が地元チームを応援する姿は日本で言うと高校野球に近いものがある。
 
 さてサッカーのセリエAの世界ではユベントスが試合巧者ぶりを発揮して2年連続リーグ優勝を果たし02−03リーグの幕を閉じたが、イタリア野球リーグは日本のプロ野球同様ただいまリーグ戦真っ盛りである。簡単にリーグの説明をしてみよう。サッカーのようにセリエA、B、Cの順に(実際にはA1、A2、B、C1…)レベルごとにカテゴリーに分けられていている。(ちなみにセリエとはイタリア語でシリーズを意味する。)チーム数自体はサッカーに比べると極端に少ない(セリエA1 10チーム、A2 24チーム、B 40チーム、C 51チーム 合計130チーム)が、ヨーロッパ自体が野球に縁のない土地柄であることを考慮すれば充分すぎる数ではないだろうか。
 
 この完全に組織化されたリーグを見ると、自然発生的にチームが生まれた日本やアメリカの野球の歴史とは異なり、連盟をはじめ計画的に作られ、その歴史が浅いように見えるが、実際はリーグ誕生1948年と以外に近代スポーツとしての歴史は意外にも深い。各チームのロゴタイプはアメリカの大リーグを模倣したものが多いところをみると大リーグをコンセプトに作られたものに間違いないであろう。ホームとロードの3連戦ごと試合が行われ、リーグ終了後プレーオフと大リーグでいうワールドシリーズ(ウィンド・ベースボール・シリーズ)があるという点でもそれが伺われる。
 
 ある晴れた日曜日、自宅から一番近い野球場に足を運んでみた。カテゴリーはセリエC1 カッラーラ・マッサ対ロセッレ・シティ・ランバーズ戦だ。スタンドなんかは当然ないただの原っぱに柵を設けただけのグランドだった。観客は7、8人と数えるほどしかいない。彼らに話を聞くとみんなプレーヤーの家族ということだ。イタリアではサッカーだと草サッカーレベルの試合を見るだけでも入場料500円位取られるが当たり前なのだが、野球は無料である。そこでも社会的地位の低さが伺われる。
 
 さて気になるプレイレベルだが、想像していたものより以外に高いレベルだった。この試合には黒人選手のドミニカ人が何人か助っ人として混ざっていてレベルの調和を保っているようだった。イタリア野球は世界的にみるとアメリカ・キューバ・日本・韓国・台湾の次レベル、オーストラリアと同じくらいらしい。大リーグでもイタリア人選手が3人ほど活躍しているらしい。
 
 試合を観て一番印象に残ったのは選手達の掛け声である。「ドゥエ・アウト!(ツーアウト)」「ラガッツイ!ファール(ボーイズ・ファール)」イタリア語と英語のミックス。イタリア語に野球用語の英語はシックリこない。やはりどこか無理があるような気がする。イタリアはカンパニスモ(生まれ育った町の教会の鐘が一番美しいと信じ込む考えのこと)が強い国である。アメリカ文化が世界に影響を及ぼす状況に横槍を入れたがるそんな民族なのである。アメリカに対して排他的な部分があるそんなイタリアで野球がサッカーのように社会的地位を認知されることはそう簡単なことではないと思えた。とにかくサッカー大国イタリアでセリエA 野球観戦はそうなかなかできるものではない。チャンスがあれば一度足を運んでみる価値は充分にある。

Reported by 丹野栄一:イタリア発

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