「サッカーはどこの国ではじまったスポーツなのでしょうか?」との問いに、多くの人々は「それはもちろんサッカーの発祥の地であるイギリスにきまっている」と答えるであろう。
実は1836年にイングランドのフットボール・アソシエーションが創立される以前、古代ギリシャやインカ帝国などにサッカーに通じる競技が世界に多数存在していたことはあまり知られていない。そしてここサッカー先進国イタリアにもサッカーに通じたスポーツはそれ以前から存在していたのである。それが「Calcio
in Costume」(カルチョ・イン・コストゥーメ):別名「Calcio di livria」(カルチョ・ディ・リブリア)だ。
カルチョとはご存知の通り、イタリア語でサッカーを意味するが、それ以前に本来は「蹴り」という意味がある。カルチョ・イン・コストゥーメ全体を日本語に訳すと「伝統サッカー」と言ったところか。イタリアは西ヨーロッパの国々の中で唯一、イングランドのフットボール・アソシエーションから世界に広まった英語が語源である「Football」の言葉を使用しない国である。それはこういった古代からの伝統的なサッカーが存在した背景からなのであろう。そう考えると日本の蹴球が中国語のように足球ではなく日本の蹴鞠から来たのかと考えると面白いが、実はそれは定かでない。
以下の通り、参考までに世界各国のサッカーの呼び名を表にまとめてみたので見てもらいたい。イタリアだけ呼び名が異なり、日本の蹴球という漢字がイタリアの呼び名に近いことがわかる。

さてそのカルチョ・イン・コストゥーメの話に戻るが、特に代表的なもののひとつに芸術と歴史の街フィレンツェのものがある。現在は「Calcio
Storico Fiorentino」(カルチョ・ストリコ・フィオレンティーノ)と言う世界でも数少ないサッカー祭りの一環で毎年おこなわれているのだ。ルールは通常のサッカーよりも少しだけ複雑だ。まず試合は各チーム27人もの選手で構成される。試合時間は特に決まって定められたものはないらしくその時々に定められ異なるらしいが、この祭りの試合は60分でおこなわれていた。当然ながらゴールにボールを入れると得点で「Caccia」(カッチャ)と言う、そのカッチャが多い方が勝ちということになる。面白いのは、シュートしたボールを外すと0.5点と計算され2回外すと逆に1点献上することになってしまうのである。
実はこの競技カルチョと言う名がついてるがどちらかと言うとラグビーやオージーフットボールなどに近く、球を足で蹴ることはなく、シュートはほとんど手で投げていた。何より選手の体格がそれらに近く、みんながたいの良い筋肉質である。本来は中世からの歴史あるルールがあるらしいが、試合中乱闘が随時おこり、それらに興奮しヤジを飛ばす観客の姿はどちらかと言うとプロレスに近いものがある。しかしさすが芸術と歴史の街フィレンツェ、ラッパや太鼓等の楽器や民族衣装を着飾って競技する選手の姿はイタリア各地に遺跡として残る古代ローマの闘技場でおこなわれた格闘シーンを想い出す。さらにその荒々しさと時折見せる優雅な動きは現代イタリアサッカーの激しさとスペクタクルに通じるものがあると言えよう。
さてこの祭り、毎年6月24日とその他、別に2日が設けられておこなわれる。市内中心部のど真ん中にある広場「ピアッツア・サンタクローチェ」でおこなわれる。本来は中世の軍人の士気を高めるためのものだったが、1930年長くおこなわれていなかったこのスポーツが400周年記念の行事の一環で復活しはじめたという。是非6月にイタリアを周る機会があったら一度見てもらいたい。
※参考ホームページ
http://www.mega.it/ita/gui/monu/xcalcio.htm
Reported by 丹野栄一:イタリア発
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