| アメリカでは1月のフットボールシーズンの終わりと同時にカレッジスポーツファンの目は一気にバスケットボールへ向けられる。オレゴン大学も例外ではなく、フットボール同様に学生が長い列を作ってバスケットボールのチケットを手に入れる。特に今年はフットボールチームが残念なシーズンを送った事、それから今シーズン終了後にNBA入りが予想されるルーク=ジャクソン、ルーク=リドノールの二人の存在などを理由にバスケットボールへの期待は相当高まった。
オレゴン大学のホームコートである「マッカーサーコート」は築76年を迎える。9000人以上の観客収容能力を持つのだが、「本当に?」と疑いたくなるような狭さ、汚さである。しかし、オレゴン大学は歴史的に地元で圧倒的な強さを誇るのだが、それは実はこの建物のおかげだとされているのである。
アメリカでバスケットボールやフットボールを観戦した事がある人はおわかりだと思うが、観客は敵チームの攻撃の時に必ず「ノイズ」を立てる。手をたたいたり、奇声を発したりして相手の攻撃を騒音で妨害しようというのだが、このマッカーサーコートでの決まり事は「足踏み」。手拍子も奇声も全てかき消す騒音をこの足踏みが作り出してしまう。何を隠そうこのアリーナは築76年の「木造」なのである。小さな木造の体育館で一斉に9000人が足音を立てるものだから、隣の人の声も全く聞こえない状況になるのである。昨年、南カリフォルニア大学のビビーヘッドコーチは、マッカーサーコートの観客のあまりのうるささに「今まで見た中で最も野蛮なファン」と酷評した程である。
ところで、今回観戦に行ったのはオレゴン大学(University of Oregon)対オレゴン州立大学(Oregon State
University)の試合だったのだが、この試合はいつもにも増してその「ノイズ」が大きくなる。オレゴン州を代表するこの大学同士の対戦はまさにオレゴンを2分する戦いになり、人々はこの2チームの戦いを”civil
war”(市民権戦争)と呼ぶのである。2チームに大きな力の差があっても、2チームとも優勝争いから脱落していても、この2チームの戦いだけは特別であり、必ずと言っていいほど好ゲームを展開してくれる。
実は、全米の多くの大学はこの2大学のように必ず特定の「ライバル」を持っている。日本で言えば野球の早慶戦、ラグビーの早明戦のようなライバル関係が全米各地に存在するのである。カレッジスポーツだけでなく、その他のメジャースポーツにおいても無数のライバル関係が存在し、そのゲームだけは異種独特の雰囲気に包まれるのである。その証拠に、アメリカではこの「ライバル関係」(Rivalry)のゲームを伝えるためのウェブサイトまである程である。スポーツ専門チャンネルのESPNでは「Top
10 Great Rivalries」などという投票まで行っている。
この、チーム同士のライバル関係を意識しながらゲームを見るのは実は非常に簡単にスポーツに入り込める観戦方法の1つだと思う。しかし、日本人はスポーツを観戦する時に特定の選手に注目してスポーツ観戦を見る傾向がある。これはこれでいいのだが、これだと「個人」のファンは増えても「チーム」に強い思い入れを持つファンが育たないのである。
例えば、オレゴン大学とオレゴン州立大学の試合を見ている観客にとって、誰がどんなプレーをしているかなどほとんど関係ない。大事なことは自分の大学が相手の大学を倒して優越感に浸りたいだけなのである。それが、自然とチームへの愛情へと変わっていく。
日本のスポーツにもこうしたライバル関係のいくつかは存在するだろう。しかし、「ホーム&アウェイ」が確立されていない日本のスポーツ界ではこうしたライバル関係を育てる事も容易ではないはずである。その証拠に、地域密着が徹底されているJリーグには多くのライバル関係が存在している反面、プロ野球ではいわゆる「伝統の一戦」ぐらいなものだろう。例えば、ヤクルトファンと巨人ファンが東京の「市民権」を競って戦えたらもっと面白いのだが・・・。
Reported by 星野太志
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