「テールゲート」という言葉は日本では聞きなれない言葉である。先日、アメリカ人の友人に「テールゲートって何?」と聞いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。「大学のフットボールスタジアム内ではお酒が飲めないから、試合前に『テールゲート』で酔っ払ってから試合を見に行くんだよ。」

彼のこの回答が正しいかどうかは別として、とりあえず簡単に「テールゲート」を紹介しよう。アメリカの大学で、フットボールの試合が行われるスタジアムの周辺には、試合の前日から無数のキャンピングカーが集まり始める。現役の学生、地元のファン、遠くから駆けつけた卒業生などが各々、キャンピングカーでスタジアムの駐車場に乗りつけ、バーベキューをしながら仲間と試合までの時間を過ごす。これが「テールゲートパーティ」である。
(テールゲート=Pick Upトラックやバンなどの後ろ部分の荷台のこと)

私も先日、「テールゲート」を初体験してきた。試合開始の3時間ほど前に会場に到着したのだが、スタジアムの駐車場は間違って「キャンピングカーの品評会」に来てしまったかと思わせる程にキャンピングカーで埋め尽くされ、各キャンピングカーでそれぞれの「テールゲート」が開かれている。ほぼ全てのキャンピングカーに地元オレゴン大学「オレゴン・ダックス」の旗が立っており、中には特別にオレゴン大学のスクールカラーにペイントされている車も少なからず見られ、最初のカルチャーショックである(みんな、あの車をどこで乗るんだ?)。

だだっ広い駐車場でようやく仲間を発見し挨拶をかわしたのだが、そこでもビックリ!私のクラスメートは当然全員大学院生で、皆数週間前にオレゴンに到着したばかりである。それなのに、全員「オレゴン」のロゴが入ったトレーナーや帽子を身に纏っているではないか・・・。「いつの間に買ったんだ?」と、またまたカルチャーショックである。自分が対戦相手のスクールカラーを身につけていない事を確認しつつ、とりあえずはビールを飲みながら試合開始の時間までの楽しい時間を過ごした。

試合の時間が近づき、人の流れが徐々にスタジアムに向き始める。当然、全員スタジアムに向かうのかと思っていると、「チケット持ってないから」と車に残る人がたくさんいる。中には、「Enjoy the game!」と家路に着く人も・・・。どうやら「テールゲート」だけを楽しみに来る人も少なくないようである。日本でも、ワールドカップの時にはチケットを持たずにスタジアムに出掛ける人をたくさん見たが、彼らはチケットを手に入れる事を期待して集まったものである。ところが、このアメリカ人達、もともとゲームを見る気がない「確信犯」である。

一般的に「スポーツを楽しむ」といった時に私たちは何を楽しむのだろうか?贔屓チームの勝利、応援、好きな選手の活躍など様々であるが、「スポーツに付随したイベント」もスポーツを楽しむ大きな要因の一つである。大学のサークル活動の後、スポーツクラブなどでの運動の後、子供のスポーツの応援をした後などに集まって一杯やろうという事は、日常的に行われている。スポーツ活動に伴って催されるこうしたイベントも、スポーツの一部と考えられるのではないか。

そして、ある意味こうした場が「スポーツと日常」が最も深く関わっている場所と言えるのではないか。この「テールゲートパーティ」、フットボールの試合という巨大なスポーツイベントさえも自分たちの生活に融合させてしまうアメリカ人の「スポーツの楽しみ方」を非常によく反映しているように思う。

さらに言えば、こうした場こそがスポーツに興味を持たない人の目を、スポーツに向けさせる大きなチャンスになり得るのではないか。スポーツに興味のない人にいきなり「スポーツを見に来てください」というのは難しい。しかし、テールゲートのような場所なら誰もが気軽に足を運び、楽しい時間を過ごす事ができる。スポーツに興味のない人にテールゲートに来てもらえれば、その人をフットボール観戦に導くまではそう遠くはない。日本でも、こうしたアプローチでスポーツをより身近なものにできないだろうか。「明日、テールゲートで会いましょう!」

ところで、この日の試合後にスタジアムを出る時、一緒に行った友人達に「今日のお前は応援の仕方が足りなかった」と非難されてしまった。「次のゲームは朝からテールゲートに行って、十分に酔っ払ってからスタジアムに来なさい」と。冒頭に触れた友人の回答であるが、この意味では正しいのかもしれない。でも、どんなに酔っ払ってもアメリカ人の応援について行くのは不可能だ・・・。

次回のコラムでは、肝心の「世界で一番うるさい場所」であるスタジアムの中と試合について書きたいと思う。

Reported by 星野 太志

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