9月にカレッジフットボールのシーズンを迎えるアメリカでは、シーズン開幕を待望していたファンを中心に一層の盛り上がりを見せている事だろう(筆者は原稿提出時、日本に滞在中)。私の通うオレゴン大学(University of Oregon)も、全米2位にランクされた昨年に比べてだいぶ戦力は落ちるが、街はスクールカラーの緑と黄色に染まっているに違いない。私自身も今シーズンの観戦をとても楽しみにしている。

ところがこのカレッジフットボール、チケットを入手するのが非常に難しい。一般席、学生席共にチケットが発売と同時に売り切れるのを見ていると、多くの大学が7万から8万人収容のスタジアムを所有するのもうなずける。さらに厄介なのがシーズンシートである。フットボールの有名校のシーズンシートを所有する人達は、亡くなる際にそのシーズンシートを「遺産」として相続するという。アメリカ人にとって、カレッジフットボールがどれ程大切なものであるかをうかがい知る事ができる。

さて、「続編」などと称しながら、女子バスケとはかけ離れた、男子の話題から入ってしまった。前回のコラムではNCAA女子バスケットボールリーグの試合会場において、50代や60代と思しきファンが会場を埋め、その何とも言えない和やかな会場の雰囲気に私自身が引き込まれてしまったお話をした。今回冒頭でフットボールについて触れたのは、この「遺言でフットボールのシーズンチケットを遺すファン」と「女子バスケの応援に駆け付ける中高年ファン」の間に非常に近いものを感じ、これらがアメリカのスポーツファン、しいてはアメリカスポーツ文化(スポーツ観戦文化と言った方が正しいかもしれないが)の特徴の一つを良く映していると感じたからである。

私は学生時代に東京六大学野球やラグビーの対抗戦グループなど、日本の主たる学生スポーツの試合をしばしば観戦に行った。そこにも当然中高年のファンの方はたくさんいるが、アメリカ人のおじさん・おばさん達のように立ち上がり、目の色を変えて贔屓のチームを応援する人にはまずお目にかかれなかった。また、アメリカの4大スポーツと呼ばれるプロスポーツの会場にも、そして大人気のカレッジフットボールの会場にも、こうした中高年ファンは山ほどいる。しかし、大学で女子バスケの試合を観戦するまで、私自身アメリカのスタジアムやアリーナでの中高年ファンの多さには気付かずにいた。まさに、女子バスケがアメリカスポーツ文化の魅力の一つを私に教えてくれたのである。

さらに、私はこの「おじさん・おばさんファンパワー」こそがアメリカスポーツの底力だと考えている。アメリカでスポーツを観戦に行った時は、是非中高年夫婦に話しかけてみて欲しい。彼らと共にエキサイトし、彼らの贔屓チームを応援する。そうすると、彼らは喜んでそのチームの昔話から最近の成績まで、様々な事を教えてくれるだろう。まるで自分の子供や孫の自慢をするように、チームの事を語ってくれる。彼らにとって、チームはまさに息子のようなものであり、成績や競技レベルをあまり意識せずに熱心に応援を続ける。こうしたファンの存在がチームを支えていると言ってもいいのではないか。

昨今、日本のスポーツの衰退が叫ばれているが、日本でもアメリカのような中高年ファンを増やす事が重要なのではないか。もちろん、そこに至るには様々な問題が山積している。しかし、子育てを終えた夫婦が気軽に観戦に行く事が出来るスポーツを提供すれば、時間とお金にゆとりのできたこれらのファンは、スポーツを強力に支えて行ってくれるだろう。

Reported by 星野 太志

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