マドリッドに住む人達に、スペイン代表とレアルマドリッドではどちらが大事が聞いてみるといい。恐らく、ほとんどの人が「マドリッド」と答えるだろう。

スペインは日本の1.5倍ほどの面積に多くの文化を持つ、多民族国家である。それを知らずスペインを旅すると、各地域の違いや生活レベルの格差に驚いてしまう。例えば、バルセロナの人間がラコルーニャ(ガリシア地方)に行くとしたら、そこは彼らにとって海外旅行みたいなもの。同じ国であるのに言葉も文化もまったく異なるのである。

そのため、スペインのサッカーリーグ(リーガ・エスパニョ−ラ)では、同じ国内リーグの遠征にもかかわらず、インターナショナルマッチの気分を味わえる。それは例えるなら、同じ国の中に日本と韓国があるようなものなのだ。実はこのことが原因で、この国は争いが絶えなかった歴史がある。今でこそ戦争や内戦はなくなったが、現在でも人々は、民族の独立テロの恐怖と背中合わせに生きているのである。

しかし、一方でこれだけの多民族国家をうまくコントロールしていると、感心することがある。世界各地には、未だに戦争・内戦が絶えないところがあるにもかかわらず…。では、多民族国家のスペインはどうやって、争いの絶えない中にも、国の秩序を保っているのか?それはひとえにサッカーの役割が大きかったと、私は考える。平和の象徴であるスポーツ、サッカーが時には代理戦争の役割を、担っているのではないだろうか。

スペインを代表する2大サッカークラブチーム、レアルマドリッドとバルセロナは昔からお互いにライバルだったと同時に、そのサッカーの試合は、スペイン覇権誇示の場でもあった。ある日私は、チャンピオンズリーグの試合で、ドイツのバイエルン・ミュンヘンとバルセロナの試合を、スペインのマドリッドのバーで観戦していた。

バルサ(バルセロナ)が得点を決めリードしたので、私がガッツポーズをしたところ、レアルマドリッドのサポーターであるおっさん達に、「バルサなんか応援するんでない!」と怒鳴られてしまった。つまり、マドリッドの人間はバルセロナの人間のことを、同じ国の仲間なんて思ってもいないのである。

そんな国がひとつの代表チームになっている…。民衆の愛着がない代表チーム…。つまり代表よりクラブチーム。それがスペイン代表なのである。そんな代表がワールドカップで良い成績を残せるわけがないだろう。スペインも英国のように、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、と地域ごとに別れて出ることができたら、強いに違いない。カタルーニャ(バルセロナ)、カスティリャーノ(マドリッド)というチームに民衆は熱狂し、ラウールも怪我を気にせず、自分の故郷のため思いきりプレーができるだろう。

ワールドカップ決勝戦がカタルーニャvsカスティリャーノなんてありうるかも知れないし、それにガリシア、バレンシア、バスコだって決して侮れないチームになるだろう。そういえば、あるスペイン人サッカーコーチが、今回のワールドカップ前に言っていた。

「なぜワールドカップに日韓共同チームで出場しないのか?」

つまり彼らスペイン人にとってのスペイン代表は、日本人にとって、お祭りのような「日韓合同チーム」みたいなものなのかもしれない。

Reported by 丹野 栄一

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