|
未だFIFAワールドカップTMの興奮冷めやらぬ日本――。しかし遠く離れたフランスでは、既に別の興奮が街を覆っている。そう、真夏最大のイベント「ツール・ド・フランス」がやってくるのだ!
1903年にスタートし、2度の世界大戦で中断されたものの、今年で第89回を迎える「ツール」。「Tour de France=フランス一周」とその名が示す通り、自転車でフランスの野山を駆け抜ける世界最大級のロードレースだ。今年は7月6日から28日までの23日間、全21行程で行われる。毎年ルートが変わり、今年のスタートは隣国のルクセンブルク、そこからフランスに入り、時計と逆回りにフランスを一周する。後半はピレネーとアルプスを通り、ゴールはパリ・シャンゼリゼ。
この全日程の中には、「タイムトライアル」と呼ばれる純粋なスピードレースから、平地の長距離コース、さらにピレネーやアルプス山脈を越える過酷な「山岳コース」(今年の最高標高はなんと2645m!)まで様々な要素が含まれている。だからもちろん選ばれし勝者――総合優勝者の他に、山岳賞、スプリント賞、新人賞の各賞がある――も多様。さらに勝者を包み込むジャージも色とりどり!総合優勝「マイヨ・ジョーヌ」の黄色から、緑、白地に赤玉、白。カラフルなパレードがフランス全土を駆け抜ける。
ところでツールが毎年開催される「7月」とは、フランス国民が、夏のバカンスに突入する月。フランス人の大半が自宅で、または田舎の別荘でのんびりとTVを見て過ごす時なのである。そして彼らがTVの中に見るものとは、好むと好まざるとに関わらず、「フランスの片田舎を爆走している自転車乗りの姿」。
「父親が四六時中TVにかじりついて、遊びにも連れて行ってくれなかった。だからツールは大嫌いだったよ。」と、子供の頃の思い出を苦々しく語るフランス人は多い。しかしそんなことを言う人ほど、とびきりツールに詳しかったりする。「うわぁ、俺が高校に行く時に自転車で通った道だ!同じ道を奴らが通っている!」と、大興奮の友人。遠く離れた故郷を、そして思い出の地を、TV画面の中に見出したのだ。今年も23日間、同じような言葉を叫び、同じように興奮する人が、フランス中に存在するのだ。
ツール・ド・フランスは、言ってみればフランス版『夏の高校野球』。真夏のTVを独占し、故郷を懐かしみ、プレーの向こうに青春を見つけ、「あの時の勝負はすごかった」と、うんちくを語る――そんな夏の風物詩なのだ。
Reported by 宮本あさか
|