カバディ -Kabaddi- 文:渡辺功
写真提供:日本アマチュアカバディ協会
 

「カバディ、カバデイ、カバディ、カバディ…‥」
大のおとなが、大声で「カバディ、カバディ」と、くりかえし叫びながら相手にタッチをしては逃げまわる。真剣な鬼ごっこ、それとも人間ドッジボール?
 一見すると摩訶不思議なスポーツだが、そんな「カバディ」も、東南アジアの国々では数千年の歴史をもち、なかでもインドでは「青少年の健全な育成」のため、国をあげて普及させてきた。それほど由緒のあるスポーツなのだ。
「やってみると、タックルやフェイント、高度な戦術もあって、知的な格闘技といった感じです。選手が、退場と復活をくりかえすところは、まさに'輪廻転生'の具現化なんですよ(笑)」(日本アマチュアカバディ協会・金澤武二事務局長)
 こどもの頃の鬼ごっこやドッジボールだって、観ているより、実際にやった方が面白かったハズ。なんの道具も使わずに、子どもから大人まで、男女問わずに楽しめるアジアン・スポーツ「カバディ」。
 さぁ、コートの中心で「カバディ」と叫んでみよう。

●概要●
 東南アジアで広く普及し、競技人口は1千万人にも及ぶ。インドやバングラデシュでは国技として盛んに行われ、賞金つきの全国大会も開催されている。実力では、国内に3万近いチームがあるインドが図抜けていて、企業に所属しながらも競技に専念する、事実上プロのカバディ選手がいるほどだ。1978年に設立された「アジア・カバディ連盟」には、現在インド、バングラディシュのほか、パキスタン、スリランカ、ブータン、モルジブ、タイ、マレーシア、シンガポール、中国、韓国、日本の計12カ国が加盟。80年には、第1回のアジア・カバディ選手権大会が開催された。アジア大会でも、90年の北京大会から正式種目となったことで、東南アジアだけでなく、アジア全域に広がりをみせている。
 日本に紹介されたのは79年。インドのビジャ大学スタンダル・ラーマ教授が、千葉県東金中学校で指導したのがはじまり。2年後の81年には、「アジア・カバディ連盟」から選手団が来日して、東金市内の小中学校を中心に、模擬試合や実技指導を行った。これを機に「日本アマチュア・カバディ協会」が、設立された。
 88年の第2回アジア・カバディ選手権には、日本代表チームが初参加。89年からは、全日本カバディ選手権も開かれている。日本の競技人口は約2千人。全日本選手権の参加チームは30前後を数える。
 国内タイトルを総ナメしているのが、大正大学のカバディ部。インド仏教研究のかたわら、早くから競技に取り組んでいた名門で、02年の釜山アジア大会に派遣された日本代表12人中9人が、大正大の学生とOBだった。このチームには、現役の僧侶が3人。天台宗の宗務総長の長男や、浅草寺の貫首の孫もいて「仏教界のドリームチーム」と、話題を集めた。
 また、女子日本代表は、インドに次いで世界ランキング2位。今年7月には、インドで第1回の女子カバディ・アジア選手権が予定されており、活躍が期待される。

●歴史●
 紀元前のインドには、武器を持たずに数人で獣を囲み、声をかけながら捕らえる遊戯性の高い狩猟が、行われていた。この素手で戦う技術、獣の襲撃から身を守る方法が競技化されて、カバディの起源になったと言われている。インドの大叙事詩のひとつ「マハーバーラタ(戦記)」には、戦争で7人の敵に囲まれた主人公の息子が、敵陣突破を試みるが、力尽きる場面がある。その記述に基づいて、ひとりの攻め手と7人の守備側でプレーする、現在のルールの基本が、定められた。
 インド独立の父ガンジー、ノーベル文学賞作家タゴール、インド初代首相のネールたちは、次代のインドを支える青少年の育成のためにと、カバディの普及につとめ、組織作りを行なった。その過程で、1951年に正式な統一ルールが制定された。それまでは、地域ごとにさまざまなルールもあり、なかには境界線を設けず、広大な土地で、延々と声を出しながら走り続けたケースも、あったようだ。
 競技の名称も、「ハドゥドゥ」(バングラデシュ)、「グゥドゥ」(スリランカ)、「ドド」(ネパール)などと、国によってバラバラだったが、78年の「アジア・カバディ連盟」設立にあわせ、インドで使われていた呼称「カバディ」に統一された。ただ、「カバディ」という単語自体には、意味はなく、語源も不明。

●ルール●
 1チーム7人ずつで行い、前後半20分ハーフ(女子は15分)で得点を競う。ドッジボールのようなコートに、自陣と敵陣で分かれ、攻撃と守備を交互にくりかえす。
 攻撃側のチームは、選手ひとり(レイダー)を、守備側(アンティ)のコートに送り込み、相手選手の身体にタッチを試みる。無事、レイダーが自陣コートに戻ってくれば、タッチに成功した相手の人数が、そのまま得点になる。ただし、その間、レイダーは息継ぎをせずに「カバディ、カバディ…」と連呼しなければならない。途中で息をつくことは許されず、息を吸った時点でアンティの得点になる。相手へのタッチは、手でも足でも構わない。また、指1本でも自陣コートに触れれば、戻ってきたと認められる。
 アンティは、自陣に戻る前にレイダーを捕まえれば、1点となる。そのために、レイダーへのタックルや、アンティの選手総掛かりで、レイダーの手首、足首、腰などを押さえつけることが、認められている。
 タッチされたアンティ。そして、捕まったり途中で息切れしたレイダーは、一時的にコート外へ退場になる。が、味方の攻撃時、タッチに成功した分の人数が、コートに復活できる。また、7人全員が退場になっても、ゲームは終了しない。相手チームに2点加算されるのと引き替えに、全員がコート内に復活して、タイムアップするまで、ゲームは続けられる。
 コートは、縦12.5m、横10m(女子は、11×8m)の大きさで、本来は、土と堆肥とおが屑で作られた柔らかいグラウンドを使用するが、日本では、屋内(体育館)で行われることも多い。
 攻撃側は、フットワークやフェイントを駆使してすばやくコートを駆けまわる。守備側は、タッチされないように逃げていたかと思えば、瞬時にして果敢なタックルやホールディングで、レイダーを捕えにかかる。
 ただ、「カバディ、カバディ…」と、息の続く限り叫ぶからではない。一瞬にして、入れ替わる攻守。その点で、カバディは「息をもつかせぬ」スポーツなのだ。

コート

 

●競技団体●
日本アマチュアカバディ協会
〒162−0843 東京都新宿区市谷田町2−20−1 市ヶ谷田町ハイツ103
TEL  03−5227−7270
FAX  03−5227−2010
公式サイト http://homepage2.nifty.com/kabaddi-nippon/
 随時、全国で普及活動をしています。ご希望の際は、お問い合わせください。

また、毎週土曜午後、東京都練馬区のカ行(りっこう)幼稚園で、日本代表の強化練習が行われています。

●大会スケジュール●
第1回女子カバディアジア選手権(予定)
7月15日〜17日
インド・ハイデラバード

ほか、国内大会は、
第4回西日本カバティ選手権大会
第16回全日本カバティ選手権大会、を予定(日時未定)

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