「巡ってきた大阪で柳本JAPAN第2章がはじまる」柳本晶一 柳本晶一
柳本晶一
Shoichi Yanagimoto
全日本女子バレーボールチーム監督
プロフィール 

オリンピックで過去2度も金メダルを獲得した女子のバレーボールは、かつて「日本のお家芸」とまで言われていた。しかし、次第に世界から置いて行かれ、90年代後半に入るとトップチームとの距離は絶望的なほどに開いてしまう。そんな日本バレーを見事な手腕で復活させ、2大会ぶりとなるアテネオリンピック出場へと導いたのが、全日本女子バレーボールチームの柳本晶一監督だ。4年に一度のビッグイベントである世界選手権を前に、大会への抱負を熱く語ってくれた。

文=小野 哲史
写真=星乃 滋




全日本の目標は金メダルしかない

7月舞洲アリーナでの全日本女子チーム紅白戦にて
7月舞洲アリーナでの全日本女子チーム紅白戦にて

―2年後の北京五輪を見据え、今回の世界選手権はどういった狙いをお持ちなのでしょうか?

柳本 僕は目標ありきでチーム作りをやるんです。アテネ五輪が終わってまた監督に就任するときも、4年後の北京にはどういった形に持っていくかということで逆算していった。そうしたプランの中では、北京に向けて非常に大きな意味を占めるのが、今年の世界バレーじゃないかなと。それにはやはり、順位をこだわっていかなきゃいけないし、内容も北京につながるような戦い方をしていかなきゃいけないと思っていますね。

―その内容に関してですが、全日本チームが目指すバレーとはどのようなバレーなのでしょうか?

柳本 全日本は日本で唯一のチームです。敵は外国しかいない。だから、日本の独創性を構築したチームを目指したいですね。身長差や体格差はどうしても補えないものがありますから、去年は「変化とスピード」をベースにチーム作りをしてきました。それにプラス、ダイナミックな攻撃力、あるいはブロッキング技術などを付け加えていかなきゃいけないということで、今年はとくにブロックに力を入れていったんです。

―今年はかなり長い時間を費やして合宿をされています。他にはどんな部分を強化してきたのですか?

柳本 強化合宿ってシンプルなことだと思うんです。欠点を補い、長所を伸ばす。そのどちらを先にやっていくかなんですが、少々の欠点には目をつぶって長所を伸ばしたのがアテネ五輪までの時期でした。ロケットに例えるなら、リスクを背負って打ち上がったロケットから、いらないものをポーンと落としてやるのが今の時期なんです。だから、大型セッターも育ててますし、ブロッキング技術もいま着手することによって、必ず北京で花が咲くようになってくると思いますけどね。

―それが俗に言われている「柳本監督のシナリオ」になるのでしょうか?

柳本 そうやってよく言われますけど、指導者やリーダーが、「私はこうするよ」って目的や目標をきちんと言えない者はリーダーじゃないですよ。私が2003年に全日本の監督に就任したとき、最初に言ったのが「目標は金メダルしかない」ということでした。それがたとえば10年かかろうが構わないと。つまりそのとき、すでに2012年のロンドン五輪までのスパンを引いてしまったんです。大山加奈や、今は怪我をしてますが栗原恵はロンドンでは28歳、木村沙織は26歳です。オリンピックはやはり2回、3回と経験しなきゃ勝てないと思うし、逆に3回も出たらメダルを獲りますよ、これは間違いありません。

―女子選手をまとめる立場として、いろいろなご苦労があるのではありませんか?

柳本 3年前に監督になって「金メダルを獲る」と言ったとき、周囲にも笑われましたけど、選手たちも「えっ、オリンピック?」って夢物語だったですよ。シドニーは出場できていなかったから、8年ぶりに目指さなきゃいけない。選手自身が信じていなかった。でも、選手一人一人は高い能力があると思ってたから、あとはどうやってやる気にさせるか、モチベーションを上げていくにはどうしていくか、だったんです。初めて女子のチームを率いた東洋紡時代には、とても苦労しましたからね。とにかく一所懸命コミュニケーションを交わすようにしていったわけです。

―ここまでのチーム作りで、監督自身、手応えを感じていますか?

柳本 勝負事っていうのはどれだけ努力しても、運が向いて来ないときもある。とくに、世界の4位ぐらいから上になると、あともう運だけなんです。だけど、今の女子バレーは中国とブラジルが強い。じゃあ、北京五輪がその2チームで決勝戦をやると決まっているかと言えばそうじゃありませんよね。決まってたら、こんなにしんどいことしませんよ(笑)。その確率を少しでも上げるのが日々の練習なんです。去年は菅山かおるみたいな選手が出てきたり、私は毎年新しいことにチャレンジしてるので、また今年も新しいバレーをお見せできると思っています。

前のページに戻る page 1/2 次のページへ
ページの先頭に戻ります