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試合前の記者会見で、選手の本音を見極めるのはむずかしい。
ときどき、選手は嘘もつく。調子がいいのに悪いフリを装ったり、ケガをしているのに「好調です」と言ったりするからだ。
世界陸上の最終日に行われた女子マラソン。レースの二日前に日本の選手5人の記者会見が行われた。
もっとも落ちついていたのが、土佐礼子だった。
それまではアッケラカンとした「天然キャラ」が持ち味だったのに、この日の会見では落ちつき払っていた。
実は7月、土佐は合宿先の中国・昆明で足に怪我を負い、松葉杖で帰国した。当然ながら世界陸上への出場には、「万全の状態で走れるのか?」という心配の声があがった。
それでも土佐は記者会見の席で、
「(ケガをしたことで)いい休養になったと思います」
と前向きな発言をしたのだ。
世界陸上では日本人最上位となり、しかもメダルを獲れば来年の北京五輪の代表に内定する。とても重圧のかかる大会だ。しかしこのことについても、
「代表になれることは分かっていますが、プレッシャーにならないようにします」
と淡々としたものだった。
他の選手が「北京は意識します」と話したりしたのに比べ、土佐の淡々とした話しぶりが印象に残った。
レースは終盤、土佐が一度は5位に落ちる。しかし顔をゆがめながらひとり、そしてもうひとり抜く。3位。
長居陸上競技場に帰ってきた土佐には大きな拍手がおくられた。
レース後の会見がまた、印象的だった。
「天然キャラ」の土佐が帰ってきたのだ。
一時、5位になった時には、
「(前の選手が)落ちて来い、落ちて来いと呪いながら走ってました」
と記者を笑わせた。
レースの終盤はしっかりと順位を意識していたようで、
「疲れはたまってない、疲れはたまってないと言い聞かせてました」
と持ち前の粘り強い走りが出来たことに満足の様子だった。
レースの前とレース後の表情の落差。
落ちつき払った態度は、二日前からレースに集中していた証拠だろう。
そして五輪代表に内定したことで、いつもの土佐礼子が戻ってきた。
二日前の記者会見と、レース、そしてレース後の表情を見て感じたのは、日本選手の中でいちばん自然に走った土佐にメダルが輝いたのではないかということだ。
この自然な雰囲気をぜひとも、来年の北京でも見たいと思う。
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