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田口壮の笑顔は素敵だった。
メジャーリーグのワールドシリーズが行われたセントルイスは寒く、気温は4度という日もあった。正直、野球を観るにはふさわしい環境とはいえなかったし、何より選手にとってプレーしづらいコンディションだった。
セントルイス・カーディナルスとデトロイト・タイガースのワールドシリーズで、勝負の分かれ目となったのは「ミス」だった。バント処理、むずかしい外野フライの落球。タイガースがミスで自滅し、カーディナルスが勝利をつかんだ。
カーディナルスにもミスはあったが、致命傷にならずに済んだ。ミスが目立ったシリーズだったからこそ、堅実なプレーを披露する田口の活躍が目立った。
第4戦の8回裏、無死二塁の場面で犠牲バントをするためだけに登場した田口だったが、それはそれは見事なバントを決めた。試合終盤での質の高い仕事だった。しかもそのバントを処理した投手が一塁に悪送球、それが決勝点となったのである。
今年のプレーオフ、田口には「運」を引き寄せる力があった。その見えない力を信じて、監督は田口を起用したのだと思う。
世界一になってからの田口のインタビューにも好感が持てた。
「いろいろなことが出来て、自分でもびっくりしている面もあります。これから、もっともっと野球がうまくなるような気がします」
田口はもう37歳になる。十分にベテランの域に達しているが、まだ向上心を失っていないのが好もしい。
実際にセントルイスに足を運んでみて驚いたのは、地元での田口の人気は相当なものだということだ。選手紹介の時の歓声はチームでのトップクラスだったし、バントや好守を見せた時の拍手は、心のこもったものだった。
カーディナルスでプレーして5年目。ファンの間では、決して派手ではないけれど、しっかりとしたプレーを見せる「ソウ・タグチ」の名前は定着している。
アメリカでは田口のような選手を「ロール・プレイヤー」と呼ぶ。意訳すれば、脇役といった意味だろうか。セントルイスのファンは脇役に熱い拍手をおくっていた。田口にもその愛情は伝わっていた。
「セントルイスの街も、ファンも大好きだということは言えます」
今年のオフ、田口は契約更改を迎える。セントルイスは彼にふさわしい街だと思う。
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