ジーコ監督

 ジーコ監督って、監督としての実力は本当に試されないまま、ワールドカップ本番に突入するようだ。

 ジーコ監督は、Jリーグで強烈な存在感を示すオシム監督や、プレミアリーグのアーセナルの指揮を執り、いまだに日本人に熱烈な支持者のいベンゲル監督のような際立った戦略論を展開するわけではない。

 ただし、ジーコ・ジャパンは際どいところで勝ちを拾ったり、なかなか負けないチームである。なかなか論理では分析できない、粘着質の強さがジーコ監督のチームにはあるように思う。

 ある関係者によると、ジーコ監督はトルシエ前監督のように自分が目立とうとするようなことはなく(それは選手としての実績がそうさせるのだろう)、むしろ人間的には控え目だという。決して自分が粘っこい体質ではない。

 しかし、選手を見る観察眼には確かなものがあると言われる。今回のワールドカップの選手選考においても、プレー面だけでなく、選手の性格を注視しながら23人を選出したことがうかがえる。ワールドカップは準備期間を含めれば長い戦いになる。グラウンドだけでなく、何気ない仕種、コミュニケーション能力などを長い期間、観察して23人が揃った。わりに保守的に見える選考だが、ここに粘っこいチームの源があるのではないか。その源とは、ジーコ・ジャパンにおいては選手の入れ替わりが最終局面を迎えて、少なかったと言うことだ。

 最後、選手選考でFWの巻(千葉)が代表入りして話題となったが、これも大きなサプライズとは言えなかったと思う。ジーコ監督は中心メンバーは大きく入れ替えることはなかった。これは私から見れば、監督の選手への誠実さの現われだと思う。人事権を掌握していることをことさら大きく見せようとしないところに、監督の人間性が現れているのではないか。

 もちろんこうしたサプライズの少ない選考には、「選手に厳しくなれない弱さがある」と指摘する声もあるが、チームスポーツは選手の入れ替わりが多いよりも、代表経験者の顔ぶれが一定していた方がチーム力はアップする面もある。

 他競技、たとえばラグビーでは1年間で代表選手の入れ替わるパーセンテージは「30%以内が望ましい」と言われている。チームカラー、戦術の徹底度などが継承されていくために必要な数字が30%前後ということになる。

 ジーコ監督は、自分の哲学を浸透させるためにある意味、競争の少ないチーム作りを進めてきた。この方法は決して悪くない。その姿勢が粘っこさにつながっている気がするからだ。

 願わくは、この決断がワールドカップで「吉」と出ることを祈るのみである。

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