今江敏晃

 2005年の日本シリーズが始まる前、どれだけの人が千葉ロッテ・マリーンズの今江敏晃の名前を知っていただろうか。

 PL学園出身の4年目の22歳。去年まではわずか61試合の出場にとどまっていたが、今季はチーム最多安打を記録。そして日本シリーズで大ブレイクしたのである。第1戦、第2戦で記録した8打席連続安打は新記録である。守備でも素晴らしい活躍を見せ、見事にMVPに輝いたのである。

 優勝を飾り、MVPに選ばれた晩、ビールかけが終わって各社の取材に応じた今江は、好青年を絵に描いたような青年だった。

 優勝を実感したのは第4戦、9回ツーアウトを取ってからだった。しかもそのツーアウトは、今江が小フライとなったバントを好捕し、ダブルプレーにしとめた瞬間だった。

「あのアウトふたつでなんか楽になったんです。だから顔が緩んでいたのかもしれません。それまでシンドい試合が続いてましたからね」

 このバントの処理が実に見事だった。猛然と奪取をして、投手と捕手の間に割って入ったのだ。これもベンチの指示ではなく、本人の判断だったというから驚きだ。日本では細かいところまで指示が出るものなのだが、千葉ロッテは選手任せ。バレンタイン監督の期待にさすがはPL学園出身、野球をきっちり仕込まれている今江が応えたのだ。

 そして打席では日本シリーズ中に、いままでに経験したことのない感覚をバッターボックスで経験したという。

「もう、振ったら全部ヒットになる感じでした。フォークが来ても体は突っ込まずに、待てる。フォークが落ちてくるのがよく見えるんですよ。こんなことは今までありませんでした。もし、このシーズン中にこの感覚が来てたら、首位打者も夢じゃなかったな、と」

 いわゆる「ゾーン」に入っていたのだ。どんな選手でも体験したことがある特別な時間。

それが日本シリーズの大舞台にやって来たあたり、今江の強運ぶりがうかがえる。

 PL時代は主将を務め、相当苦労したようだが、千葉ロッテに入ってからは1年目に1軍デビューし、バレンタイン体制になってブレイク。

「監督は急にペットボトルの水をかけてきたり、妙な方法でコミュニケーションを取ってくるんですよね」

 これから日本を代表する選手になる予感をさせる選手だ。今年のプレーオフ期間中に子どもが産まれた。

「シリーズが終わって、いまは自分の子どもにずっと触れていたい気持ちでいっぱいです」

 若いお父さんであるが、野球選手としてはもう一流の域に達している、通称は「ゴリ」である。

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