|
暑かった。とんでもなく暑かった。
オールスターが行われた甲子園球場の夕方、試合前の練習で選手がグラウンドに散っていた。夕陽が容赦なく照りつけ、やっぱりここで高校野球を開催するのは酷だなあと思ってしまった。本当に冷たいものが欲しかった。
関係者と情報を交換していると、突然、涼しげに、なおかつ爽やかにグラウンドに登場したのが新庄剛志だった。いや、「SHINJO」と書かないといけないのかな。
「暑いですねえ、甲子園は」
報道陣に軽く挨拶する新庄はどこまでも笑顔である。彼が古巣の甲子園球場に現れると、暑さを忘れた。本当に忘れた。その出で立ちに思わず目を奪われてしまったのだ。
髪は限りなく茶色、そして驚いたことに練習用のユニフォームは北海道日本ハムのものではなく、胸のマークは「SHINJO」である。彼だけのオリジナル・ユニフォームだ。そして彼は庭ともいえる甲子園の外野で楽しそうにキャッチボールを始めたのだった。
日本のプロ野球は残念ながら元気がなくなっている。しかし新庄にはそんな空気を吹き飛ばそうという意気込みが感じられるのだ。オールスターでのサービス精神は見事なほどだった。オールスターの直前にデッドボールを受けて状態のよくなかった新庄は、甲子園でも控えに回った。出番は試合も終わり近くなって訪れた。
「代打、新庄」
とコールされた途端、甲子園が沸いた。そして新庄は絶妙のタイミングでダグアウトから飛び出したのである。
手には金色のバットが握られていた。派手だ。そしてスパイクにはダイヤモンドが埋め込まれていたのである。それだけでなく、バッターボックスに立つと、いきなりバットでセンター方向を指し予告ホームラン。ふつう、こんなことしたら許されない。でも、甲子園は盛り上がった。
「バットは試合前に使うことに決めた。盛り上がった? それはすごくよかった。それがいちばんうれしいから」
ここまでファンのことを考える選手って、いまどきなかなか見当たらない。でも本当は、オールスター前に受けたデッドボールのため、新庄の右手小指は骨折していたのだった。それでも自分の役割を果たそうとする新庄は本当のプロだと思う。
それに本当は金色のバット、違反だった。でも、審判まで黙認してくれたのだ……やっぱり「新庄だから」許されてしまうのである!
新庄剛志、誰からも愛されるプレイヤー、甲子園で育ち、アメリカを経由して、札幌を盛り上げる真のスターである。
|