【ラスベガスで新たな”夢”と出会う】
――テレビで活躍されていた姿が見られなくなったと思ったら、去年は、「行方不明」になられたようで……。
【奥野】 ハハハハハ。行方不明ですか。たしかに、そうだったかもしれません。

――実際、連絡先がわからず、風の噂では、ラスベガスの「水中ショウ」に出るために特訓中だったとか……。
【奥野】 水中ショウですか……(苦笑)。

――ええ。ガラスの囲まれた水槽のなかで、イルカと泳いでいるとか……。ひどい噂では、日本のどこかの温泉で、サーカス団と一緒に水中ショウをしているとか……。
【奥野】 まいったなあ(苦笑)。私は、シルク・ド・ソレイユでトレーニングを受けていたんですけどね。

――つい最近、そのことがわかって、思わず拍手をしました。シルク・ド・ソレイユなら、世界の超一流の団体ですからね。
【奥野】 ええ。日本では、まだ、あまり知られていない面がありますけど、本部がモントリオールにあって、そこで、シルク・ド・ソレイユのシンボルである太陽が背中に描かれたジャケットを着て歩いていたら、羨望の眼差しで見られるんですよ。「あなたは、どんなことをするアーティストなの?」とか、話しかけられます。日本で、それを着ていたら、「そのデッカイ太陽、なに、それ? ダッサ〜イ」とか、いわれてしまいましたけど(笑)。

――最近は、「サルティンバンコ」というショーの来日公演があったりして、日本でも大勢のファンが生まれていると聞いてますが……。
【奥野】 ええ。でも、まだまだ知られていないようです。フランス語の「シルク」が「サーカス」という意味で、綱渡りとか空中ブランコをやるサーカス団と同じと思っている人も多いみたいです。

――僕は、ラスベガスで行われているシルク・ド・ソレイユの公演を見たのですが、全体が無言劇の物語のように構成されていて、そのテーマが少々哲学的で、なにやら人類の誕生から現代文明への進化と、環境破壊に対する批判のメッセージが込められているようで……。
【奥野】 そうですね。見方によっては、そういう見方もできると思います。けど、ほんとうは、あまり深い意味はないみたいですよ(笑)。ただ、身体表現とか、集団の演技とかは、ほんとうに素晴らしいと思いますけど。

――そうですね。パントマイムやバレエ、ダンスを組み合わせたうえに、サーカス的な要素が加わって、何人もの人が綱から降りてきたり昇ったり、トランポリンで空中高く飛び跳ねたり、空中ブランコや鉄棒の演技もあって、もう、驚きの連続でした。
【奥野】 それは、ラスベガスのトレジャー・アイランドでやっている「シルク・ド・ソレイユ」の「ミステール」(MYSTERE)ですよね。私の目指しているのは、同じラスベガスでも、ベラッジオでやっている「オー」といって、巨大なプールを使ったショウなんです。

――やっぱり、水中ショウ?
【奥野】 その言い方は違います(苦笑)。プールはガラス張りじゃないですよ(笑)。大きな直方体のプールが5つに分かれていて、基本的に、観客はプールを上から見ることになるのですが、それぞれのプールが上に上がったり下に下がったりするんです。

――空中からの飛び込みも?
【奥野】 ええ。20メートルくらいの高さから飛び込む人もいます。

――それはスゴイけど、施設もスゴそうですね。
【奥野】 はい。10年くらい使える施設を作り、8年くらいでモトをとる計画だそうです。入場券は、3ヶ月以上先まで売り切れているそうです。

――それは、すごい! そこで、演技者は、かなりの身体能力を要求されるわけですよね。
【奥野】 ええ。ですから、シルク・ド・ソレイユは、演技者のスカウティングも積極的で、体操とか、新体操とか、シンクロで、ナショナル・チームのメンバーからぎりぎりで落ちた人とか、引退を決めたメダリストなんかがいたら、すぐにスカウト活動をしています。

――奥野さんも、そうしてスカウトされたわけですか?
【奥野】 私の場合は、現役を引退して、テレビの仕事とかをしているうちに、ちょっと疲れたというか……。いつまでも、これでいいのかな、という思いがあって。そういうときに、ラスベガスで「オー」のショウを見て、あなたもやってみれば……といわれて……。

――やっぱり、テレビの仕事は疲れましたか?
【奥野】 テレビというのは、自分の勉強になることも多いのですが、蓄積よりも自分を出していく部分のほうが多いような気がして。週に何度かのレギュラー出演をこなすなかで、追い回されるという感じもありましたし。そのうえ、新聞報道などを取りあげてコメントしたりしていたときに、その新聞報道に誤りがあったりして、精神的に疲れました。それで、一度休みたいと思ったし、自分のやりたいことをやらないと……という思いで、「シルク」に入ったんです。いまは、気持ちも落ち着きましたから、またテレビの仕事なんかもできればやりたいという気持ちになってますけど。

――まあ、テレビの仕事というのは、「放電」ばかりで「充電」をしにくい面がありますから、自分を見失いそうになって、難しい面 があると思いますね。
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