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[vol18]なぎなた特集(中編)

なぎなたで心と体を磨く

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抽選が運命を左右する

12月13日、大阪市中央体育館で行われた「皇后杯 全日本なぎなた選手権大会」は、最も権威のある大会として、女子は今年で54回目を迎える。
初段から5段までの段位と、その上に錬士、教士、藩士の称号が続く「なぎなた」において、段位4段以上が出場条件となる今大会は、まさに「なぎなた」大会の最高峰。全国から選び抜かれたのは、57名の選手。対戦相手は、抽選で決められるため、“4段対錬士”という実力差の対戦もあれば、決勝戦かと見間違える顔合わせが1回戦で実現する場合もある。組み合わせが吉と出るか、凶と出るか。初戦から見逃せない展開が続くのが、観戦の見どころでもある。

会場に張り詰める緊張感

会場は驚くほど静かだ。観客席はハイレベルな戦いを観ようと溢れんばかりの人で埋め尽くされているが、たまに声援が聞こえてくるものの、基本は無言での観戦であり、独特の緊張感がある。

そんな張りつめた空気のなか、舞台に設けられた二つの試合場からは、なぎなた同士がかち合う音や選手の気合が響いてくる。激しく撃ち合いが続いたかと思えば、選手が一歩も動かないこともある。その瞬間は会場もさらにしんと静まり返り、選手の動きに目が釘づけになる。

筆者は初めての観戦だが、すっかり雰囲気に引き込まれてしまった。相手のわずかな隙をついて、打ちこまれる一本は、あまりにも一瞬で、観戦初心者としては見逃してしまうことも多々ある。だが、5キロほどの防具を身にまといながら華麗に身をこなす姿や、ピンと伸びた背筋、勝利しても喜びをあらわにせず、「礼に始まり礼に終わる」という武道精神を貫く選手の品位には惚れぼれする。なぎなたを操作する姿に憧れて、「なぎなた」を始める選手がいることもうなずけるのだ。

大阪代表、島名選手と木下選手

選手57名のうち、大阪代表は島名きよみ選手と木下三恵選手の二人だ。島名選手は、3歳の頃から「なぎなた」を始めたという「なぎなた」歴30年以上の錬士。昨年度の大会では準優勝というトップクラスの実力を持ち、今大会では優勝の期待がかかっていた。1回戦は、試合開始からわずか数十秒でスネ2本を取って勝利。2回戦は、昨年度の準決勝の対戦相手で、沖縄県出身の選手。前回の勝利もあり、有利かと思われたが、逆にスネを一本取られ、惜しくも敗退してしまう。

五段の木下選手は、中学時代から「なぎなた」を始め、当初から注目を浴びていた。今大会も初戦、2回戦ともにスネ一本勝ちで順調に勝ち進 んできたが、準々決勝で、大分県の選手にメン一本を奪われ、敗退。結果として、愛媛の選手が大会最多7度目の優勝を飾った。

この大会をもって2009年度の「なぎなた」のシーズンは終了した。 「大会の敗因は練習不足。「なぎなた」は、小さい子どもからお年寄りまで、年齢それぞれに目標を持って、面白さを見いだせる競技だと思います。
競技の頂点をめざしたり、健康のために始めたり、一生付き合っていけるのが「なぎなた」なので、私も生涯続けていきたいです。」と、島名選手。

木下選手は、「準々決勝では勝ちたかったのですが、自分のペースで試合をさせてもらえず、相手のペースにのってしまいました。「なぎなた」を通して、私自身、忍耐強くなったと思います。様々な人との出会いがあり、勝ち負け関係なく友好関係が広がるのも大きいですね。

子どもは礼儀の勉強になりますし、激しい動きはないのに意外と全身を使うので、年配になられても続けられる方が多いです。年を経ても、ピンと伸びた背筋で颯爽(さっそう)と歩いておられる先生方は、格好良いですし、見習いたいもの。私もまた来年から、初心に返って始めたい」と語ってくれた。

二人にとっては惜しい大会となったが、また来シーズン、新たな戦いぶりに注目したい。

取材日:12月13日(日)
場所: 大阪市中央体育館


藤田 あかり(Akari Fujita)
大阪府出身。2001年京都外国語大学英米語学科卒業後、フリーライター。
アスリート、作家、職人、老舗の当主など、人にクローズアップした取材を中心に活動。