「なぎなた」と聞いてまず思い浮かぶのは、源義経に仕えた豪傑(ごうけつ)、弁慶の存在だろう。白い頭巾の僧兵の衣装に、なぎなたを構えるいかめしい姿。石像や歌舞伎などで誰もが目にする弁慶のトレードマークとして、長い柄に、反り返った長い刀は際立った印象を残している。
「なぎなた」は、絵巻物や物語をひもとくと10~11世紀頃の合戦から登場する。全長2メートルを超える長さをいかし、馬上から弓矢を放つ武士をなぎ払ったり、四方八方から攻める敵を一気になぎ倒したり、歩兵の武器として大いに力を発揮した。
しかし、鉄砲の伝来から兵法が変わると、「なぎなた」は戦での活躍の場を失ってしまう。江戸時代になると、装飾的な意味合いを持ち、武家に嫁ぐ 子女の嫁入り道具の一つとなり、また、婦女子の護身術としての地位が確立されていく。これが、歴史を経て発展しながら、現在の「なぎなた」となったのだ。
1955年に全日本なぎなた連盟が発足すると、各県にも連盟が次々に誕生。全日本選手権大会を頂点として、様々な大会が繰り広げられている。
国内だけなく世界にも「なぎなた」は普及し、1990年に発足した国際なぎなた連盟には現在、日本、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、ブラジル、チェコ、イタリアの13カ国が加盟し、4年に一度世界大会も開催されている。
歴史的背景から日本では競技人口の大半を女性が占めるが、海外では男性にも人気があるという。
大阪では府下全体で25の「なぎなた」の練習道場があり、その内の6道場が大阪市に点在する。
競技人口は多くはないが歴史は古く、全日本なぎなた連盟が誕生する2年前に近畿なぎなた連盟、大阪なぎなた連盟が発足していることから、当時から優秀な指導者が大阪を率いていたことがうかがえる。
「なぎなた」の競技は、「試合」と「演技」に区別される。「試合」では防具を着用し1対1で対戦。面、小手、胴、スネ、咽喉の部位のいずれかを発声とともに素早く打突するかが競われる。制限時間内に3本勝負のうち2本を先取した方が勝ちで、制限時間を超えて勝負がつかない場合は、判定で勝敗が下される。
自分の体よりも長いなぎなたを上下、斜め、横と自在に操り、時には短く、時には長く持って相手との間合いをはかり、確実に部位を打突する。言葉では簡単なように聞こえるが、これが非常に難しい。
部位にとりあえず当たればいいというものではなく、振りにも形があり、形から外れて打突しても1本にはならない。
さらに、「喉を打つ場合は切先」「面を打つ場合は切先から15~20センチ以内」という風に、「なぎなた」自身にも有効範囲がある。
定められた形に添って、適切な部位打つことで、初めて1本となる。「気剣体一致」という言葉があるが、まさに心と体、そしてなぎなたが一つになったときに実現する。
「演技」では、二人一組が演技者となって、「なぎなた」の基本動作や技がいかに正しく行われているどうかで優劣を競うものだ。
「試合」「演技」とも共通しているのは、「相手の心を見る」ことだという。
「試合」では、がむしゃらに向かっていくのではなく、相手がどう動こうとしているのかを見切り、確実に打突へとつなげる。逆に見抜かれては相手に打たれてしまうし、気持ちで負けてしまうと相手のペースに飲み込まれてしまう。
この見切り合いは、レベルが高い試合であればあるほど見られるという。制限時間のうち両者動かずといった状態が長引くほど、しびれるような緊張感が、見る者を静かな熱狂へと導くのだ。
「演技」では、相手と呼吸を合わせることが不可欠だ。相手の動きに合わせようという、お互いの気持ちが、なめらかな演技を作りだしていく。
「なぎなたで大切な『相手の気持ちを察する』ということは、実生活に役立つ面が多い。相手のことを思いやることで、我慢することも身に付きます。人間的な成長を考えて、「なぎなた」をお子さんに習わせるお母さんも少なくないですね」
大阪市なぎなた連盟理事長の稲岡和子さんは話す。
実際に幼稚園児から受け入れている練習道場もあるという。目上の人を敬う心や礼儀作法もまた、自然と身についていく。小さな子どもが「ありがとうございます」と挨拶する姿は見ていてすがすがしいもの。また、身心の鍛練や健康維持という面で、「なぎなた」を始めるシニアもいるという。
大阪市の練習道場では、下は幼稚園児から上は80歳代が練習に励んでおり、生涯にわたって続けられるスポーツでもあることを物語っている。
見学や初心者教室、各練習道場の紹介などは随時、大阪なぎなた連盟、大阪市なぎなた連盟で受け付けている。興味がある人は一度問い合わせしてみてはいかがだろうか。
次回は、国内大会の最高峰、「皇后盃第54回全日本なぎなた選手権大会」の模様をレポートする。
取材日:12月10日(木)
場所: 大阪市なぎなた連盟
問い合わせ
大阪なぎなた連盟 TEL 06-6582-2557
大阪市なぎなた連盟 TEL 06-6585-1705 FAX 06-6586-1706

- 藤田 あかり(Akari Fujita)
- 大阪府出身。2001年京都外国語大学英米語学科卒業後、フリーライター。
アスリート、作家、職人、老舗の当主など、人にクローズアップした取材を中心に活動。

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