J1の昇格請負人-。2008年7月、期限付き移籍でセレッソ大阪へ加入し、2009年1月からは完全移籍となった「ヒラジ」こと平島崇選手(13番)には、そんな肩書きがついてくる。2004年はアビスパ福岡、2007年は京都サンガF.Cにおいて、いずれもJ1昇格に貢献した選手である。2009年、優勝からJ1昇格を狙うセレッソ大阪にとって、経験豊富な彼は、フィジカル面、メンタル面においても頼もしい存在だ。
もともとは野球少年で、友達と遊ぶのも専ら野球だったという平島選手。兄の影響を受けてサッカークラブに入ったのが小学3年生の頃。当時、プロへの思いは薄く、両親からも野球選手になることを勧められていた。中学校はジュニアユースチームに進むが、その動機は「野球で坊主になるのがどうしても嫌」だったから。その際もプロを意識したことはなかったという。
本格的にプロをめざすきっかけとなったのが、高校の先輩、吉原宏太(現水戸ホーリーホック)選手が高校訪問に訪れたことだった。全国高校サッカー選手権大会においてチームをベスト4に導き、自らは得点王に輝いた吉原選手。コンサドーレ札幌に入団し現役Jリーガーとして活躍する彼を目の当たりにした平島選手は、その時「プロになりたい」と強く意識したという。そこから、プロへの挑戦が始まるが不採用が続き、大学進学を決意するも受験に失敗。高校生活最後の大会で、アビスパ福岡のスカウト陣の目にとまり、滑り込みで入団が決定。Jリーガーとしての道がひらけ、現在にいたっている。
彼自身は大阪の堺市出身というのもあり、「いずれは地元のクラブでプレイを」という思いは強かったという。しかしながら、セレッソ移籍は迷いに迷った。折しも、京都サンガF.CはJ1昇格したところで、「さあ、これから」という時だったからだ。
「このタイミングで行くべきかずいぶん悩みましたね。決め手は、京都サンガF.Cの監督に自分の評価を聞いたことでした。監督が思い描くクラブ像に自分が含まれていなかったことを知り、それで決心がつきました。地元には友人もいますし、親も近くで自分のプレイを見ることができる。愛着もあるから、最後は地元で終わりたいという思いはもともとありましたしね」
セレッソ大阪に加入してまず平島選手が驚いたのは、選手の運動量の多さだった。練習ではあまり走らず筋トレが中心であるのに対し、試合では一貫して走ることが要求される。
「走らないクラブはないですが、とにかく運動量がずばぬけていますね。サイドバックという僕のポジションはもともと運動量が多いのですが、他の選手もとにかく走ります。試合中、足がつることも多いですね。気持ちが前に出すぎて、体が悲鳴をあげる時も少なくない」
クラブの平均年齢が抜きんでて若いのも大きな刺激になったという。27歳の彼でもセレッソ大阪ではベテランの域に入ってしまうのだ。
「若い選手には、いろんな面で負けてられないというのがある。走り回らなきゃいけないうえに、攻撃にもどんどん絡んでいかないといけないから、体力的な面できついのかもしれませんが、それを感じないように意識しています。きつくても、年のせいにはしたくないですからね。若い者には負けていられんと思う方が、気持ちが強く持てる」
ディフェンスの巧みさから、「絶対点を取られたくない時」に起用されるケースが平島選手には多い。きつい上下運動もいとわずこなし、安定した運動量にも定評があるのは、年齢にあらがい続ける彼の闘志が原動力になっているのかもしれない。
後半戦に入り、優勝の二文字も見えてきたセレッソ大阪。「J1昇格請負人」として、平島選手がなすべきことを改めて尋ねた。
「セレッソ大阪はここ何年かJ1に上がれるチャンスはあったのに、ことごとく逃している。それをメンバーがどれだけ感じているかだと思います。まだ試合数があるという思いでやっていると、後から痛い目にあう。毎試合を大事にしていくしかない」
攻めて攻めて、シュートでフィニッシュするという攻撃スタイルのセレッソは、攻撃力が高い半面、うっかり点を取られる場面が多い。それが命取りになる可能性がある。大事な試合になればなるほど、ミスは許されない。平島選手は、平常心がいかにキーワードとして大事かを語る。
「今年は入れ替え戦がなく、3クラブ自動でJ1へ上がれる状態ですから、上がらないとおかしい。メンバーもほとんど去年と同じですからね。昇格を意識するなといっても、心のどこかで意識は絶対にしてしまうんですよ。でも、自分が言えることは、結局“いつも通りやる”ということ。意識がプレイに出てしまえばギクシャクするので、そのまま自分の力をだす、ということは伝えていきたいですね」
取材日:2009年6月26日
於:南津守さくら公園スポーツ広場

- 藤田 あかり(Akari Fujita)
- 大阪府出身。2001年京都外国語大学英米語学科卒業後、フリーライター。
アスリート、作家、職人、老舗の当主など、人にクローズアップした取材を中心に活動。

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