「絶対負けんといてほしい。これがえびす様の名前をチームにつける条件や」
商売繁盛の神様、えべっさんをチーム名に冠する大阪エヴェッサは誕生当初、今宮戎神社へ名前を拝借する許可をもらおうと足を運んだ際、宮司からこんな粋な提案を受けている。
その神様のご加護と、「神様の名前をもらった以上は負けられない」というプレッシャーがチームの強みになったこともあってか、大阪エヴェッサは、日本プロバスケットボールリーグ「bjリーグ」が2005年にスタートするやいなや、シーズン3連覇というすさまじい強さで大阪を賑わしている。「阪神タイガースの優勝を人生で3度見れば死ぬ」という都市伝説が生まれる街で、この成績は大阪人の死生感をも揺るがす大変な出来事だ。
2008-2009の4年目のシーズンは、日本人選手の大量移籍や怪我もあり、前半戦は不調に苦しんだが、後半戦に突入すると怒涛の10連勝を遂げるなど鬼気迫る戦いを見せ、粘りに粘ってプレイオフ進出を決めた。残念ながら4連覇を狙ってのプレイオフファイナルでは勝利することはできなかったが、彼らのプレイは大阪の人々の胸を熱くさせたに違いない。
さて、大阪エヴェッサが所属するbjリーグだが、基本的なルールを説明すると「レギュラーシーズン」「プレイオフ」「プレイオフファイナル4」の3つのステージで戦われる。
プロ野球のセ・リーグ、パ・リーグと同様に、ウエスタンカンファレンス6チーム、イースタンカンファレンス6チームに分かれ、「レギュラーシーズン」では、10月から4月まで、各チーム52ゲームを戦う。
対戦後、各カンファレンスの上位4チーム、計8チームが「プレイオフ」へと進出。レギュラーシーズン1位と4位、2位と3位がそれぞれ上位チームのホームで2試合を行い(※1勝1敗の場合、2試合目終了後に第3試合を行って決着)、勝者が 「プレイオフファイナル4」への切符を獲得。ファイナルに残った4チームは、最後の決戦場となる有明コロシアムにて、勝ち抜き戦を展開。まずは各カンファレンスで1試合を行い、勝負を決すると、それぞれの勝者が優勝決定戦を、敗者が3、4位決定戦を行って、日本一から4位までを決めるという仕組みだ。
結成わずか4年目にして、観客席がブースター(※バスケットボールのファンのこと)でほぼ埋め尽くされるなど早くも大阪人の心をつかんだ大阪エヴェッサだが、人気の秘密には、チームが掲げる「速攻」を主体としたプレイと、大阪人の特性である「いらち」が少なからず関係しているように思える。
「勝利至上主義よりも、面白いバスケを観客に見せる。それを前提に勝つのがエヴェッサ」と、チームについて語るのは、天日謙作ヘッドコーチ。そんな彼の指導が生みだすのは「速攻を狙うこと」「走ること」という、アグレッシブで動きのあるプレイ。ボールを奪ったかと思えばまたたく間にゴールを決めている、息をつかせぬ瞬間プレイは見ていて気分爽快だ。
この疾風怒涛の攻撃は、大阪人のいらち気質と相性がいいように感じるのだ。いらちは決して誇れるものではないが、この性格と大阪エヴェッサの攻撃を重ねてみるに、信号をフライングしてしまうことは速攻に通じるし、「歩く歩道」を当然のように歩くのは、動きを止めずに素早く走りまわる大阪エヴェッサの攻撃スタイルによく似ている。
「とにかくぽんぽん点が入るから面白い」
「ゴールはまだかまだかと、イライラしなくてすむ」
このコメントは、ブースターに私が直接取材して拾ったものだ。このような声は、「いらち」と「大阪エヴェッサ」の相性を裏付ける証拠になりえるかもしれない。
何より、一度観戦すれば、スカッとするようなプレイを見せてくれることは間違いないのである。
プレイの素晴らしさはもちろんだが、「ただ強いだけでない」というのも大阪エヴェッサの大きな魅力。「大阪という地域に根を生やし、いつの間にかなくてはならない存在になりたい」と、様々な活動を行っているのだ。
例えば、「エヴェッサキャラバン」。大阪府下の学校を選手が訪問して、実技指導やバスケットボールマッチを行い、今までの訪問数は92を数える。それに付随するように2007-2008シーズンから取組むのは、「大阪ホームタウン縦断計画」だ。学校訪問を行った地域の体育館で大阪エヴェッサの公式試合を行うというもので、これまでに北は池田から南は岸和田までを制覇。試合の後も、地域でスクールを立ち上げるなど、選手育成にも貢献する。
こういった草の根運動的な努力や、試合後のサイン会や写真撮影、ブースターの要請を受けての「エヴェッサオフィシャルブログ」開設といった、日ごろの選手のたゆまぬサービスが、ブースターの心をとらえて離さない。
「地域密着ではなく、地域自生。えべっさんの名前をもらっている以上、試合に来てもらって喜んでもらったり、元気を与えたり、なにかご利益があるようなサービスをしたい」というのが、チーム全体の思い。バスケットボールに興味がなくても、一度ご利益をもらいに試合会場へ足を運んでみてはどうだろう?彼らの熱いエヴェッサ魂はきっと心に響くはずだ。
取材:(2009年4月18日 大阪府立体育会館)

- 藤田 あかり(Akari Fujita)
- 大阪府出身。2001年京都外国語大学英米語学科卒業後、フリーライター。
アスリート、作家、職人、老舗の当主など、人にクローズアップした取材を中心に活動。

![[vol06]プロバスケットチーム 大阪エヴェッサ特集(前編)](img/title.gif)

